FEATURE
TRAVEL 12 Mar 2019

聖なる森に佇む「カマルドリ修道院」へ。豪華絢爛なバロック美術と修道士たちの暮らし

SHARE

トスカーナ州の森の中「カマルドリ修道院」を訪ねて

イタリア・トスカーナ州にある、その広さと美しさで知られる森、カゼンティネーゼ。
その自然の豊かさから自然保護地区にも指定されているこの森の中に、カマルドリ修道院があります。

1000年以上の歴史を持つこのカマルドリ修道院は、現在でも修道士たちが昔ながらの任務と聖職を営みながら生活している珍しい場所。
カマルドリ修道院を訪れると、長い歴史や、修道士のあり方というものに触れることが出来ます。

せわしなくすぎる日常から離れて、静かな聖なる森の中へ向かいました。

カマルドリ修道院は、山裾にあるmonastero(モナステーロ:信者や巡礼者を迎えて神に祈りを捧げる場所)と、山の上のEremo(エレモ:修道士の住宅地や教会の場所)の2箇所に別れています。
また教会をはじめ、修道士が神に祈りを捧げる庵、信者を迎える宿坊、大ホール、図書館、そして世界最古の薬局が併設されています。
カマルドリ会はカトリック教会最古の修道会ベネディクト会から派生した、聖ロムアルドによって創設された修道会です。
広い敷地内の修道院や隠居住宅は1012年から建設が始まり、歴史の中で幾度も修復を繰り返し、1575年から1669年にかけての修復を終え現在の姿となりました。

ラテン語にある彼らの教訓であり、聖ベネデイクトの戒律でもある”Ora et Labora”(祈り、労働せよ)の言葉にもあるように、修道士の共同生活の中で自然と対峙しながら謙虚な姿勢を忘れずに、祈りと労働に人生を捧げる隠修士たち。
まさに”聖なる森”という名が相応しいこのカマルドリの果てしない自然の中で営まれる生活が、はるか昔から現代に至るまで受け継がれています。

世界最古の薬局「カマルドリ修道院薬局」

中世に、カマルドリ修道院内に病院が作られ、そのために調剤所が設けられました。
その時代には砂糖やアルコールも薬として扱われていたので、修道士が作る薬草を使ったシロップやリキュールは大切な薬品として重宝されていました。
それが現在でも修道士達の仕事としてリキュールや薬草ベースのコスメを作るという役割に受け継がれ、薬局を経営し販売することによって、ここカマルドリ修道院の経済を生んでいるのです。

先ほども挙げた”Ora et Labora”(祈り、労働せよ)というこの言葉。
ここでの「労働」とは、聖ベネデイクトの生き方にもあったように、”Orto dei semplici(オルト・デイ・センプリチ)”と呼ばれる、修道院での生活に必要な薬草を育てる畑を管理するための農作業を意味しています。
そしてそれらを収穫し、加工した薬を街の人々に提供する、薬局としての機能を果たすための仕事も「労働」の一つ。
その歴史は修道院内の薬局にある、中世からバロック時代にかけての古い器具や薬品のレシピを記した書物などからも見て取ることが出来ます。

ガレノスやヒポクラテスに始まる古代の薬草文化と、それを引き継ぎ中世に西洋医学の基礎を確立した修道院の薬学。今日のイタリアでのハーバリストという職業は、このような修道士や修道女たちの働きの延長線上にあると言われています。

聖ロムワルドの魂が息つくエレモ

現代の言葉で言えば、聖ベネデイクトは当時の薬草文化のパイオニア。
旅人や巡礼者、地元から訪れる病人の受け入れ先として病院の機能を果たしていたのがここカマルドリ修道院です。

そしてさらに勾配の厳しい深い森の中を抜けて登って行くと、修道士の隠居住宅から構成される、Eremo(エレモ)と呼ばれる建築物群がひっそりと現れます。

その森の静かで力強い美しさは修道士達が聖職を営むのに相応しく、私の訪れた1月の寒い日でも山の上は雪を纏い、言いようのない静粛な空気で包まれていました。

修道士の居住地は柵で仕切られており、一般の人は入れない

中に入ると修道士たちの住宅空間がアペニンを背にして鎮座し、聖ロムワルドのチェッラ(Cella)と呼ばれる生活空間は仕事や学習、祈りを捧げる部屋などから構成されており、その質素な作りからはこの聖人のストイックな生活が伝わってくるようです。

敷地内の教会は反対に驚くほど豪華絢爛で、静かで質素な生活の中でもやはり信仰の対象をより神聖化するための華美な装飾は必要不可欠であったのか、と思わせる驚きが。

バロック美術の豪華絢爛さ

デッラ・ロッビア家の素晴らしいマヨリカ焼きのレリーフやふんだんな金泊使いの装飾が、中世、ルネッサンス、バロックと3つの時代を通ってきた時代の経過を強く感じさせる、美しくも壮厳な、とても贅沢な空間でした。

マヨリカ焼きのレリーフ彫刻で有名なデッラ・ロッビア家の作品

じっくりゆっくりエレモを歩いたあとは、しんとした空気の中の雪景色に後ろ髪をひかれながらここを後にし、息を切らしながら森を登った行きとは反対に、ゆっくりゆっくりと山をおりました。
春になれば修道士達もこの森を歩き、神やその向こうにある森羅万象に祈りを捧げるのでしょう。
そしてぼんやり、でも強く思った神聖な場所を言葉で説明することの難しさ。
拙い私の言葉では伝えられない分、是非、皆さんに本物の”聖なる場所”を訪ねて行って頂きたいものです。
特別なイタリア旅行の日程に、カマルドリ修道院を加えてみてくださいね。

カマルドリ修道院(Monastero di Camaldoli)

住所:Località Camaldoli, 14, 52014 Camaldoli (AR) Italy
電話:(+39) 0575 556013
ホームページ:http://www.camaldoli.it

こだわりのイタリア旅行を楽しみたい人が読んでいる記事はこちら
マルケ州にある小さな村の陶工房〜古き時代の道具と歴史が育んだ佇まい
緑のトンネルを抜けて。ため息が出るほど美しいイタリア・アブルッツォの結婚式
旅行に行ったらぜひここへ!こだわりの品々と出会うイタリア・トリノのおすすめクラフトマーケット

WRITER PROFILE
林由紀子
林由紀子

マルケ州、ウルビーノ近郊のカーイ(Cagli)在住。1999年渡伊、ファエンツァの国立美術陶芸学校の陶彫刻科を卒業後、現代美術アーティストBertozzi&Casoniのもとでアシスタントとして12年に渡ってコラボする。2003年にマルケ在住のイタリア人と結婚したのをきっかけに、マルケ州の郷土料理や工芸、美術文化に強く惹かれ、自らも陶芸家として活動する中、ウルビーノを中心とするマルケ北部や県境近郊の食文化、美術工芸文化を発信する(ラファエロの丘から)を立ち上げ、現地アテンドや料理教室、工芸体験などのオーガナイスや、ウルビーノを紹介する記事などを執筆。http://www.collinediraffaello.it/

PR

ふわふわオムライスが看板メニューのカフェ&デリ「オッキアーリ」|愛車と楽しむおすすめカフェ巡り(岐阜)

SCORPION MAGAZINE
PR

イタリア流エスプレッソの楽しみ方

fiat magazine CIAO!
PR

イタリアのライフスタイルそのものを伝えたい。老舗チョコレート店「ヴェンキ」の挑戦

Mondo Alfa
PR

本場イタリアも驚く、絶品ナポリピッツァ 東京の名店

fiat magazine CIAO!
PR

イタリア人料理家直伝! 手軽で本格的なボロネーゼを作っチャオ

fiat magazine CIAO!
PR

山崎貴監督インタビュー : 最新作『ルパン三世 THE FIRST』への思いを語る Vol.01

fiat magazine CIAO!