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LIFESTYLE 07 Nov 2019

林由紀子の土着的イタリア田舎暮らし日記 第一話「私がイタリアの田舎で暮らしはじめた理由」

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イタリア田舎暮らしの連載をはじめます

皆さんこんにちは。
さて、今回のテーマは多くの人が憧れる‟田舎暮らし”。イタリアも、田舎暮らしの中に沢山の発見がある国のひとつです。
もう随分昔から、田舎暮らしというテーマはロハスな人たちのちょっとしたステイタスであったり、ヨーロッパでも名の知られた場所の田舎暮らしは、多くの方の憧れの的であったり……。
田舎暮らしという言葉そのものがひとり歩きをして、ある種のおしゃれ感の拭えないものになりつつあるのも、ちょっと本当のことですよね。
著者は、イタリアに20年住み、その半分を田舎で暮らしてまいりましたが、写真集になりそうな美しい田舎暮らしとはまた一味違う、でも味わい深く、発見の多い暮らしの中で、すっかり田舎の暮らしの魅力の虜になった一人です。

イタリアの田舎には四季とともに日差しが変わり、窓から外を眺めているだけでも飽きない

華やかさはなくても四季とともにささやかな喜びが溢れている田舎の暮らし窓から見える緑には心癒される
そこで、メジャーなイタリアの田舎のイメージからちょっと離れ、マイナーな州に住むマイナーなライターによるマイナーな情報を発信する‟コツコツ土着的田舎暮らし”レポートをはじめます! まずは、どのような経緯で今の田舎に住むことになったのか、お話してみたいと思います。

10年の通勤生活にピリオドを打つために決めた田舎への引越し

20代前半、コンテンポラリーアートの仕事をしていた林由紀子の写真

20代前半、夢中でコンテンポラリーアートの仕事をしていた頃、Galleria Cardi にてギャラリスト、Gian Enzo Speroneと一緒に
1999年に学生として渡伊して、ファエンツァ(Faenza)という焼き物の街で2年過ごしたのち、無事学生生活を終えて美術作品を制作するスタジオに勤務することが決まったのが2001年。勤務先はイモラ(Imola)というボローニャ近郊の町でした。そのころは現在のパートナーのふるさとであるマルケ州のペーザロ(Pesaro)という港町に住んでおり、海も丘もある住み心地のいいこの町が気に入っていて、通勤しやすい町に引っ越すことなく、片道の距離111㎞、通勤時間1時間45分というイタリアではかなり長い時間をかけて職場に通っていました。

齢24歳、まだまだ元気で無理の利く年齢でしたので、大好きな仕事のためならなんのその、朝は6時起き、夜は9時帰宅と毎日苦労も感じずに通勤し日々充実した生活を過ごし……そう、夢中になって制作に打ち込んだイタリア生活の青春時代と言える10年間でした。
そして楽しい日々はあっという間に過ぎ、2003年には結婚、2009年には息子も授かりますが、生活スタイルはガラリと変わり、今までどおりの通勤生活を続けるのが難しくなり……。
念願の我が子、小さな赤ちゃんを預けてまで通勤することを考えられなかった私は、生活スタイルの見直しを図ることにしました。

そんな時期に考えたのが、田舎に引っ越し、家に居ながら仕事と子育てを両立する、というアイデア。
田舎への憧れ、というよりも、のんびりとした環境で子供がのびのびと育ち、何と言ってもスペースは沢山あるので、自分の仕事である陶芸制作の場を作ったり、畑で耕作をすることもできる、という合理性を考えてのことでした。

人生で初めての自分の工房作り

そうと決まれば話は早い! というわけで選んだ土地はマルケ州の内陸、カッリ(カーリとも呼ばれる。Cagli)という中世の街並みを残す村の外れの一軒家。早速引っ越し先の家の改造計画プランを立て、業者さんに工房作りを依頼し、手元にあった僅かな家財とともに遂に田舎への引っ越しが実現。新しい生活に慣れながら、着々と工房作りを進めて行きました。

マルケ州の田舎カーリに自作した作業部屋

ゼロから自分で計画して作った工房、初めての自分だけのためのスペースに感激
私が工房として自由に使えるスペースは60㎡。初めて自分だけのスペースを持てる喜びはとても大きなものでした。採光や作業別のコーナーを考える時間はこの上ない幸せで、タイルを選んだり、窯を設置したりとワクワクしながら工事は進み、いよいよ工房が完成! 大きなお腹を抱えながら遂にマイ工房での仕事がスタートしたのです。

工房で陶芸の絵付けをする林由紀子

工房で仕事中

新しい田舎暮らしの中で見つけた楽しいことたち

さて、順風満帆で始まった田舎暮らし。色々と手を入れなければいけない所は多かれど、畑を作ったり、好きな庭木を植えたりと、街暮らしでは体験できなかったことも沢山で、何よりも家に仕事場がある、というのは大きな喜びでした。

都会では経験できない自然の中でのびのびと育つ著者の子供

畑は家族の憩いの場
無事に息子も生まれ、この土地に少しずつ根を張りながら生活をしていて気がついたことがあります。それは通勤していた頃は時間に追われ素通りしていた近郊にあるチーズ工房やサルーミ工房、地元の伝統工芸、美味しい郷土料理が食べられるお店……この土地ならではの食文化や伝統工芸がとても身近になり、生活の中に取り込めるようになったこと。

暖炉で肉を焼くマンマ

温かみ溢れる田舎のマンマ
周りの人たちと深く知り合えば知り合うほど、ひとつの場所にじっくり暮らしてみることで分かる発見が沢山あり、田舎暮らしならではの楽しみを覚えたこと。
もちろんいい事ばかりではありませんが、新しい生活の中で学んだことは数知れず。良く、‟何もない田舎”という言葉を聞きますが、その土地にどんなお宝が眠っているかは、ピンとアンテナを張っていないとキャッチ出来ないこと。
少しずつ田舎で暮らす中で見えてきた、人との繋がり、自然の素晴らしさ、そしてたくさんの小さな楽しみがあります。

山と川がすぐそばにあり、この景色を見るだけで心が癒される

近郊の自然は心のオアシス
そんな色々な体験をこれからしばらく皆さんにご紹介していければと思います。今回はまず、どうして田舎に住むことになったのかという経緯までお話しましたが、これからしばらく田舎暮らし日記にお付き合い下さいね。
では、次回の田舎暮らし日記をお楽しみに!

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WRITER PROFILE
林由紀子
林由紀子

マルケ州、ウルビーノ近郊のカーイ(Cagli)在住。1999年渡伊、ファエンツァの国立美術陶芸学校の陶彫刻科を卒業後、現代美術アーティストBertozzi&Casoniのもとでアシスタントとして12年に渡ってコラボする。2003年にマルケ在住のイタリア人と結婚したのをきっかけに、マルケ州の郷土料理や工芸、美術文化に強く惹かれ、自らも陶芸家として活動する中、ウルビーノを中心とするマルケ北部や県境近郊の食文化、美術工芸文化を発信する(ラファエロの丘から)を立ち上げ、現地アテンドや料理教室、工芸体験などのオーガナイスや、ウルビーノを紹介する記事などを執筆。http://www.collinediraffaello.it/

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