INTERVIEW
LIFESTYLE 07 May 2019

ダブルの視点から見える、イタリアと日本の違いと共通点。チッタ エンタテイメント代表取締役社長・美須アレッサンドロ

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“川崎の小イタリア”と呼びたくなる、川崎駅前の複合型商業施設「LA CITTADELLA(ラ チッタデッラ)」。ここをプロデュースする株式会社チッタ エンタテイメントの代表取締役社長は、イタリア人の父と日本人の母を持つ美須アレッサンドロ氏です。今回は彼のユニークなイタリア観に迫ります。

義理チョコ文化より、大切にしたいのはMIMOSA FESTA

——2002年にオープンした「丘の上の街」をコンセプトに掲げる「ラ チッタデッラ」はショッピングやグルメ、映画などのコンテンツが充実しており、一日中楽しめるスポットです。ちなみに丘の上の街という点で、モチーフになった街があるのでしょうか?

具体的にこの街、というのはないんです。トスカーナ州などもそうですが、イタリアには丘があってその上に街が広がる、そんな場所が少なくありません。頂上に教会があり、ふもとから小道が延びていて、その道中には小さなお店や誰かが住む家がある……そんな風景ですね。
今の「ラ チッタデッラ」には住居はありませんが、僕としては、より“街”というカラーを全面的に出していけたらと思っています。

——“イタリア”を感じられる要素として自信があるのはどんな部分ですか?

イタリアで大切にされている3月8日の国際女性デーに合わせて、毎年開催している「MIMOSA FESTA」。今年で15周年を迎えた恒例のイベントです。イタリアではこの日、大切な女性に尊敬の念や感謝の気持ち、愛を込めて、男性からミモザの花を贈る風習があります。今年はミモザカラーの風船300個を空に飛ばしたり、「花贈り男子」によりミモザを約4000名のお客さんにお渡ししたりとさまざまな催しをしました。

——日本の2/14のバレンタインデーのようですよね。

うーん、どうでしょう。実は僕の会社では5年前に義理チョコを禁止したんです(笑)。義理チョコには「横一線で気に入られたい」というようなメンタリティがあるような気がして、そういう文化はお互いに求めてないから、いらないなと。本命はもちろんご自由に、と思ってるんだけどね。

幼少期、よく訪れたのは故郷のあるローマ

——美須氏はイタリアと日本のダブルです。どちらの国で生まれたのですか?

父の当時の赴任先のフランス・パリでした。それからイタリアを経由することなく日本・東京に来て、そのまま育ちました。小学校はアメリカンスクールに通い、中学・高校は日本の学校。イタリアには年に1回くらい、父の故郷であるローマに行って祖父母に会ったり、親類でクリスマスを過ごしたりする程度でした。

——当時の印象的なエピソードをお聞かせください。

一番強烈に印象に残ってる場所はイタリア南部のナポリ沖合30kmに浮かぶカプリ島ですね。風光明媚なリゾートアイランドで幼少期の頃に1〜2回ほど訪れました。島にある切り立った崖の上までロープウェイで登り、海を見渡した時の眺めが本当にきれいだったのを覚えています。日本のビーチリゾートと言える沖縄ももちろん素敵ですが、カプリ島は平面的でなく立体的な美しさがありました。

あとは祖母の家に遊びに行った時に食後などに出してくれた、手作りのリコッタチーズのデザートも印象に残ってます。山のようなたっぷりのリコッタチーズに砂糖とシナモンをかけて食べるの。シンプルだけど美味しかったな。

「意外とイタリアでも自分は楽しめると気づけた」

——そして日本の大学に在学している間に、1年間休学してイタリア留学をしたのはどんなきっかけがあったのですか?

大学生活で毎日遊んでばっかりでしたが、ふとした時に思ったんです。「自分はイタリア人でもあるのに、イタリアに住んだことがないし、イタリア語もほとんど喋れない」。どこかコンプレックスに感じている部分もあったのかも。だから最初の半年はウンブリア州の州都であるペルージャに、残りは当時兄が通う大学もあったローマに行きました。

もともと父はイタリア人といえども超真面目。明るくて陽気な、いわゆるステレオタイプのイタリア人ではないキャラクターです。そして僕もたぶんシャイな方なんですよ。だけど留学中に「意外とイタリア人のノリは苦痛じゃないな」と気づいて、友達もわりとたくさんできました。日本でも関西人とノリが合うことが多いな〜とうすうす感じていましたが(笑)。

——ペルージャやローマでは、どんな風に遊ぶのが楽しかったですか?

ペルージャでは目的のない遊びが多かったな。とりあえずどこかの広場で仲間たちと集合してから、近くのバルなどでビールを買って、教会の大階段に座って喋りながら飲むんです。で、メインストリートは渋谷のセンター街のように混み合ってないし、まっすぐ伸びていて歩くのが気持ちいいから、とにかく何往復も歩く。で、周りの友達はナンパを始めるという(笑)。小さな町だから顔見知りも多いので、知人を見つけたら片っ端から声をかけたりして。

ローマは大きな町なのでドライブしたり。兄の友達に混ぜてもらって遊ぶことも多かったです。だいたい21時頃にライトアップされた遺跡や城で仲間と落ち合ってワイワイ遊ぶ。面白いのはお酒のシメの楽しみ方です。日本ではラーメンが鉄板だと思うんですけど、ローマでは朝4時ごろのパン屋に行く。開店準備でパンを焼いている時間帯ですが、そこでお店の人に声をかけて焼きたてのパンでシメる。洒落てるでしょ?(笑) 地域によって置かれるものは違いますが、ボンボローネ(クリームたっぷりの揚げドーナツ)がローマでは一般的でよく食べてました。

イタリア人と日本人のメンタリティ、どちらが強い?

——社会人になってからは日本でビジネスをされていますが、イタリアに行くことはありますか?

親類の結婚式などでイタリアに行きましたが、そういう用事が一通り済んでからは、すっかり足が遠のいてしまって。まあ、幼少期はイタリア以外のヨーロッパの国はほとんど行けていなかったから、今は他の国に意識が向いている部分もあるのかも。

だけどいつか必ず、僕の妻や子供達をヴェネツィアに連れて行きたいんです。僕は6歳の頃に行ったきりですが、ゴンドラや小舟がある風景はやっぱり特別でワクワクしたんですよ。だから今年、時間を作れたらいいなと思います。

——イタリアと日本、両方の文化にふれてきた美須氏。メンタリティとしてはどちらの国に強く影響を受けていると感じますか?

難しいですね。というのも、僕は一般的に語られるほど、イタリア人と日本人のメンタリティが正反対とは思っていないから。実際、僕の周りにいるイタリア人は先ほども言ったような“典型的なイタリア人”というよりは、生真面目・几帳面・女遊びをほとんどしない人(笑)が本当に多いですよ。

こう言ってしまうと面白みがなくなってしまいますけど、イタリア人と一口に言っても、いろんな人がいる。日本人だってそうですよね?

——そうなんですね、と筆者が相槌を打とうとした時、この場に同席していた日本人社員が「でも」と話を切り出されました。「でもなんとなく、楽しいことを企画したり実施している時の美須に“イタリア人らしさ”を感じます。ポジティブな感情をとてもピュアに表現する。例えば社内の新年会でも、盛り上がるムードを作るエネルギーが日本人スタッフよりずっと強いというか……」

そう? 自分では分からない! ダブルだなと自覚するのはワールドカップくらいですかね。イタリアと日本、両方のゲームを楽しめるから(笑)。

WRITER PROFILE
門上 奈央 Nao Kadokami
門上 奈央 Nao Kadokami

1991年11月13日生まれ、兵庫県神戸市出身。学生時代にはイタリア料理店で4年間アルバイト。22歳より3年間、海外のガイドブックを専門に制作する編集プロダクションに所属。25歳でフリーランスとなり、雑誌やウェブ、単行本でジャンルレスに活動中。まとまった休日ができれば海外へ。いつかイタリアでヴェネチアンガラスを買いたい。

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