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FOOD 06 Feb 2020

「自家製の天然酵母で作る焼き立てのパン」 林由紀子の土着的イタリア田舎暮らし日記 第四話

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皆さんこんにちは!
今日はイタリアの田舎暮らしには欠かせない‟パン焼き”について色々なエピソードをお話したいと思います。
日本人にとっての白米にあたるのが、イタリア人にはパンというのが在住20年の感想。「えっ! パスタじゃないの??」と思う方もいると思いますが、歴史の中でパスタよりもさらに古くからイタリア人の食卓に寄り添ってきたのは、やはりパンじゃないかと言えると思います。パスタ料理が定着する前の炭水化物はパンが中心でしたし、イタリアの食卓にはパスタ料理と共に必ず出されるのはシンプルなパン。炭水化物王国イタリアらしく、食卓にパンがないのは考えられないほど、イタリア人のDNAに組み込まれた食べ物なのだと思います。

天然酵母で作る焼き立てのパン数年前から始めた、天然酵母のパン作り

田舎で暮らすようになってから、天然酵母の美味しいパンが焼きたい!と思うようになり、パン作り教室で基礎を習ったあと見よう見まねで天然酵母パンを作るようになりました。
パン作りを通して見つけた新しい発見、考えたこと、パン焼き仲間などについて徒然にお話をしようと思います。

すべては安全で美味しい小麦粉から

小麦粉をこねて作るパン昔ながらのパン生地作り。小麦粉の香りが立つ瞬間

私の暮らすマルケ州の内陸は、中部イタリアでも軟質小麦の生産がとても盛んな土地です。かつてはローマ帝国時代にこの地域で栽培されていた古代小麦がローマ人の大切な食料として運ばれていっていたという話もあるくらいで、小麦とは切っても切れない関係にありました。
昔はどこの小さな村にも水力で回す石臼の粉挽き所が必ずあり、自分の土地で収穫した小麦を挽いてもらうために、脱穀祭りのあとは粉挽き所に長い列が出来ていたと言います。麦芽ごと石臼で挽かれる小麦粉は油分を含み酸化しやすいため6ヶ月以内に消費をした方がいいと言われていますが、栄養価としては現在の工業製品化された小麦粉とはまったく異なるものでした。
そしてどこの家庭でも、パン作り用の天然酵母を祖母から母へ、母から娘へと引き継いでいることが多く、家で大切に保管されていたそうです。
自分達の育てた小麦で作るパンは、どんなに美味しかったことでしょう。

天然酵母で作る焼き立てのパン自分達で育てた小麦でパンを焼く友人の薪窯からは、いつも素晴らしいパンが生まれてくる

私も周りに無農薬で美味しい小麦を作ろうと頑張っている生産者さんの友人たちが沢山いるため、彼らの小麦粉を使って美味しいパンが家で焼けないものか、という思いでパン焼きを始めました。天然酵母の扱いは慣れるまではなかなか難しいものでしたが、コツが掴めてくると、段々楽しくなり、オーブンの中でパンが膨らむ様子を見るときはいつも心からワクワクします。友人たちが愛情を込めて育てた小麦でパンを作れるのですから、本当に幸せですよね。

こんなパンたちが我が家の食卓に登場!

段々パン作りに慣れてくると、色々なタイプのパンを焼きたくなりますよね。
ベーシックなパンの他にも、こんなパンたちにも挑戦しています。

天然酵母で作る焼き立てのパン「コロンバ」イースター祭のパン「コロンバ」

これはイースター祭の季節にイタリア全土で食べられる菓子パン。鳩の形をかたどっていて、表面のアーモンド風味のアイシングがとても美味しいパンです。
発酵にまるまる2日かかる、なかなか難易度の高いパンです。

天然酵母で作る焼き立てのパン「クレッシャ・ディ・パスクア」イースター祭の塩味パン「クレッシャ・ディ・パスクア」

こちらもイースター祭に作られるチーズや卵のたっぷり入ったマルケ州の郷土パン。地元の職人さんが作ったテラコッタの型で焼くと美味しさも倍増です!

天然酵母で作る焼き立てのパン「パーネ・アル・モスト」葡萄の収穫期にのみ作られるモストコット入りのパン「パーネ・アル・モスト」

これは、ワイン用の葡萄が収穫される秋に、葡萄の絞り汁を煮詰めて作られるモストコットやサパと呼ばれる甘味料が昔からこの地域では使われていたのですが、これを生地に練り込んで作ったパンがこのパーネ・アル・モスト。
レーズンの入った、優しい甘味のコッペパン、とでも例えられるでしょうか。この懐かしさを誘う味が、私は大好きなのです。

とっても大事なパン仲間、粉仲間

昔ながらの石臼で小麦を挽く友人の尽力により再稼働の日の目を見た粉挽きの石臼

天然酵母パンを焼くようになってから、安全な小麦粉の大切さを再確認した私ですが、なんとその小麦粉から石臼挽きをしている友人もいます。古い粉挽き小屋を修繕し、機能するようにメンテナンスしながら仲間と粉を挽き、挽いた粉でパンを焼く。とても理想的なサイクルですよね。

トスカーナの粉挽き小屋現在でも水力で石臼を回している粉挽き小屋、トスカーナのムジェッロ地区にて

その友人の運営する粉挽き小屋のアソシエーションへ遊びに行き、粉挽きを体験させてもらったり、一緒に薪窯でパンを焼いたりもしました。友人達と天然酵母をそれぞれ持ち寄ってみんなの酵母を合体させて作るパン作りはとても楽しく、一人キッチンに籠りパン作りもいいのですが、こうして分かち合える食べ物作りというのはもっと沢山の意味合いが詰まっている気がします。

自家製の天然酵母それぞれが持ち寄った天然酵母は愛しくもある

自分たちで挽いた粉を練って生地を作り、薪窯で焼く。
ちょっと焦げ気味でも、香ばしい薪の香りのするパンからは、‟幸せの食べ物”という言葉が本当にぴったりです。

窯から出したばかりの焼き立てパン「わ~、焼けた!」と歓声が上がる瞬間

さて、こんな風に‟パン焼き”を始めたことによって私の田舎暮らしはさらに意味深いものになりました。
もちろん上手に焼きたい、美味しく焼きたいというのは誰もが思う事ですよね。

焼き立てのパンをカゴにいれて食卓へ昔は当たり前だった天然酵母のパン、イタリアでも家で焼く人は減っている

でも、昔の生活の中で食べられていた‟本当のパン”の存在を意識して考えてみる事は、これからの家族の食生活をより豊かに出来るのではないかとも、強く思うのです。
皆さんは、どんなパンを食べていますか??

イタリア田舎暮らし情報が満載の林由紀子さんの記事はこちら

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WRITER PROFILE
林由紀子
林由紀子

マルケ州、ウルビーノ近郊のカーイ(Cagli)在住。1999年渡伊、ファエンツァの国立美術陶芸学校の陶彫刻科を卒業後、現代美術アーティストBertozzi&Casoniのもとでアシスタントとして12年に渡ってコラボする。2003年にマルケ在住のイタリア人と結婚したのをきっかけに、マルケ州の郷土料理や工芸、美術文化に強く惹かれ、自らも陶芸家として活動する中、ウルビーノを中心とするマルケ北部や県境近郊の食文化、美術工芸文化を発信する(ラファエロの丘から)を立ち上げ、現地アテンドや料理教室、工芸体験などのオーガナイスや、ウルビーノを紹介する記事などを執筆。http://www.collinediraffaello.it/

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