ラヴァッツァ
COLUMN
FOOD 06 Aug 2018

トリノに生まれ、愛されて120年。イタリアのコーヒー文化を辿る「ラヴァッツァ・ミュージアム」オープン | カフェ

大矢 麻里 Mari Oya
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魔法のカップを片手に巡る

2018年4月、北部トリノに新しい複合施設「ヌーヴォラ・ラヴァッツァ」が誕生しました。イタリア屈指のコーヒーブランド「ラヴァッツァ」が、創業の地に完成させたものです。

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コーヒーブランドのラヴァッツァが、創業地のほど近くに完成させた新名所「ヌーヴォラ・ラヴァッツァ」。

3万平方メートルにおよぶ敷地内には、新本社屋をはじめとする施設のほか、コングレス・センターや教育機関「芸術・応用デザイン大学院(IAAD)」も併設されています。また食事スポットとして、レストランに加え、ラヴァッツァの社員食堂が一般に開放されているのも特色です。

この施設をラヴァッツァは、歴史と未来を提示する場所であると共に、アイディア、プロジェクト、食、さらに文化を共有するスペースと位置づけています。

施設の中でも特筆すべきは、2018年6月8日にオープンした博物館「ラヴァッツァ・ミュージアム」です。文書や写真など約8500点を収めた同社アーカイヴに併設するかたちで建てられたものです。

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ラヴァッツァの新社屋(左)は、トリノ自動車博物館も手がけたイタリア人建築家チーノ・ズッキによるもの。右のラヴァッツァ・ミュージアムは、ミュージアム設計の第一人者として知られる米国の建築家・デザイナーのラルフ・アッペルバウムが監修しています。

ビジターが入口で真っ先に渡されるのは、なんとコーヒーカップ。一見普通のものですが、実はRFタグが組み込まれたインテリジェント・カップなのです。この“魔法のカップ”を館内各所に設置されたディスプレイに置くと、デジタルライブラリーが再生される仕組みです。

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ミュージアムで来館者に配られるインテリジェント・カップ。RFタグが組み込まれており、館内各所に設置されたデジタルライブラリーを再生したり、記念写真を転送する機能も。

エスプレッソマシン創業者の探究心

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歴代エスプレッソ・マシンが展示されたコーナー。

館内には120年にわたるラヴァッツァの歩みを振り返る「歴史コーナー」も。ラヴァッツァのヒストリーは1895年、創業者ルイージ・ラヴァッツァがトリノで始めた食料品店から始まります。創意工夫の精神に溢れていた彼はコーヒー豆の販売を手がけるうち、顧客満足度をさらに高めるべく、外国から生豆を輸入して自らブレンドを始めました。直火の代わりに熱風に当てて長時間焙煎する技術も培います。ルイージの探究心はとどまるところを知らず、本場ブラジルにも渡航。そこでコーヒーという飲み物の奥深さを知り、将来イタリアでも大きな需要が見込めると確信したのです。

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「アトリエ」と題したミュージアムの1コーナー。フォトスタジオをイメージしたセットが組まれており、約60年におよぶラヴァッツァの広告史を振り返ることができます。

ルイージの進取の気性には、社会も味方しました。北部イタリア社会は1899年創業のフィアットに代表されるように、産業の近代化が急速に進みました。その波に乗ってラヴァッツァも成長を続け、彼のコーヒーは多くの食料品店やバールに広く供給されるようになっていったのです。ルイージは、「企業とは愛情をもって経営すべきものである」との言葉を遺しています。参考までに、今もラヴァッツァの正式な社名は、「ルイージ・ラヴァッツァ」です。

自動車デザインハウスとコラボ

「歴史コーナー」「コーヒーの製造工程」のあと、ビジターを迎えてくれるのは、1960年代イタリアにおける典型的な広場の再現スペースです。当時のコーヒー移動販売車もムードを盛り上げます。

社史に話を戻せば、ラヴァッツァは1989年にオフィス向けセルフマシン分野に参入します。それに伴い、1杯ごとにコーヒーパウダーを詰め替える必要がない、画期的なカートリッジ式コーヒーパウダーも考案しました。

さらに1990年代に入ると、スポーツカーのデザインで知られる「ピニンファリーナ」社とのコラボレーションをスタートさせます。機能性とデザイン性を兼ね備えた業務用エスプレッソ・マシンは、国内における法人向け分野での成功を牽引したばかりか、ラヴァッツァのイメージをよりモダンなものにするのに貢献したのは間違いありません。

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コンテンポラリー・イタリアンを提供するレストラン「コンディヴィーデレ」も、敷地の一角に建てられました。内部には古い焙煎機が飾られています。

カップの中のパラダイス

ところで、冒頭で紹介した複合施設の名称ヌーヴォラ・ラヴッツァの Nuvolaとは、イタリア語で「雲」を意味します。

きっかけは、戦後1950年の歴史的広告キャッチ「カップの中のパラダイス」でした。それを後年のテレビCMがアイデンティティとして継承。その時代を代表するコメディ俳優が「神様」と「天使」に扮して軽妙なやりとりを繰り広げる実写CMは、今日まで続くシリーズとなっています。セットは常に白い雲の上。ネーミングは、それにちなんだものなのです。

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ミュージアムの天井から吊り下げられたCMキャラクター、「カルメンチータ(左)」と「カバレロ(右)」。1965年に誕生し、本文中の「天国シリーズ」に先がけてラヴァッツァを多くの人々に印象づけました。

ミュージアムの一角には、この「天国シリーズ」のセットが設けられていています。記念撮影した写真は、例のインテリジェント・カップを介して自分のメールアドレスに送信可能です。

そして、館内見学のエピローグには、特別レシピによるコーヒーの試飲が待っています。究極の1杯は、アナタをパラダイスへと導くことでしょう。

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ラヴァッツァ新本社の建設工事中に発見された、紀元4〜5世紀の初期キリスト教会堂の跡。その広さはおよそ1600平方メートル。当初の予定を変更してプロジェクトが進められました。

◆Information: Museo Lavazza https://museo.lavazza.com

photo: Lavazza /Andrea Guermani / Andrea Martiradonna

WRITER PROFILE
大矢 麻里 Mari Oya
大矢 麻里 Mari Oya

東京出身。幼稚園教諭、商社勤務を経て、1996年にイタリア・トスカーナの古都シエナに移り住む。国立シエナ外国人大学で学び、現地の料理教室の通訳兼助手に従事したのち、新聞・雑誌への連載を開始。NHK『マイあさラジオ』をはじめとするレポーターとしても活躍中。著書に『イタリアの小さな工房めぐり』(新潮社)がある。

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