COLUMN
FOOD 20 Jun 2019

手打ちパスタ大国南イタリアプーリア州へ 世界三大穀物“小麦”を探る旅 ペペロッソ今井和正の冒険

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私は、東京・三軒茶屋にあるイタリア料理店「ペペロッソ」で総料理長を務める今井和正といいます。
同店は、まだまだ日本では普及していないイタリアのマンマ(おふくろ)の作る愛情たっぷりの手打ちパスタをメインに数多く揃え、イタリア各地のいわゆるご当地グルメや街や村ごとに個性際立つディープな地酒・オーガニックの物を中心に取り揃え一風変わったチーズもご用意しております。

手打ちパスタにこだわると、当然ながらその元となる小麦にもこだわりはじめます。

良質な小麦を求めプーリア州へ

さて、今回訪れたのは、南イタリア・プーリア州の小麦粉屋さん。プーリア州は良質な農作物を生産することで有名なエリアです。中でもオリーブは特に素晴らしく、高品質なオリーブオイルを製造しています。プーリアの景色の特徴の一つとして、長く続くオリーブ畑があります。このオリーブ畑を見るだけでも行く価値のあるプーリア州。

また、プーリア州のオリーブの樹は少し特徴的な形をしていて幹が物凄く太いというところにあります。高樹齢であり、たくさんの歴史を経験してきたオリーブの樹であることが一目瞭然。日本ではまず見かけられない圧巻サイズオリーブの樹は必見です。

オリーブ畑を超えて町の方に向かうと、今回の小麦粉屋さんがあるプーリア州ターラント県サーヴァという人口約16000人の町に到着いたします。

【Il Mulino di Caraccio Corrado】という小麦粉屋さんが今回の目的地。温かく迎えてくださった皆さん。

小麦粉を作る機械。日本でも似たような物を見た事があります。

小さくても、力のある場所だと力説するカラッチョさん。逆に小さいからこそやりたい事ができて、高品質を維持できるそう。

こちらが粉になる前の、精選と呼ばれる工程を経て余分な籾殻や、石ころが取り除かれた綺麗な状態の小麦。まるで黄金色の宝石のようでした。

旅の目的は焦がし小麦を探すこと!

こちらはローストした”焦がし小麦”と呼ばれるもの。イタリアでは「GRANO ARSO(グラーノ アルソ)」といいます。今回の旅の最大の目的はこの小麦を見に行く事にありました。かつて、プーリア州の農民達は焼畑をした後に残った丸焦げになった小麦の粒を一粒一粒拾い集めて、乳鉢等で粉にして白い小麦粉に混ぜて料理に使っていたそうです。
何故かというと、白い小麦粉はとても高く大量に購入できなかったためです。貧しい時代をうまく生き抜くためには、丸焦げになった小麦をも混ぜて、少しでも量を増やす必要があったからです。
そんなプーリア州の食文化の歴史が詰まった「GRANO ARSO」をどうしても一目見てみたかったんです。そして生産者さんに話を聞いてみたかったんです。現在の「GRANO ARSO」の製法は、焼畑はせず、コーヒー豆をローストするように焦がしてかつての歴史を守るという意味も込めて製造して残しています。プーリア州の小麦文化の一角「GRANO ARSO」は、現在もそのアイデンティティを残して守られています。

ロースト仕立てのGRANO ARSOはコーヒーや、キャラメルの香りがしました。

イタリアの小麦を分類してみます

イタリアの小麦粉は、大きく分けて下記のように分類されます。一般的な分類の違いをお話しさせていただきます(もちろん例外もあります)。 少々マニアックな話ですが、ぜひお付き合いいただき、これからパスタを食べる際にお役立てください。

GRANO DUROとGRANO TENEROの2種類にまずは分ける。

「GRANO DURO(グラーノ ドゥーロ)」と呼ばれる硬質小麦。デュラム小麦や、セモリナ粉とも言われます。カロチノイドによる黄色の色味が特徴的で、一般的な小麦の約2倍の量を含みます。伝統的には南イタリアで多く栽培されていた小麦ですが、現在ではイタリアの多くのエリアで栽培されています。

非常に粒が硬く、粒度が大きい、吸水性がよく、たんぱく質含有量が多いのが特徴です。

GRANO DUROはその精製度によって様々な種類に分けられます。
灰分による分類↓
・SEMOLA CON 0,90% DI CENERI/灰分0.90%のセモリナ粉。
・SEMOLATO CON 1,35% DI CENERI/灰分1.35%。
・SEMOLA INTEGRALE DI GRANO DURO CON 1,80% DI CENERI/灰分1.80%の全粒セモリナ粉。
灰分が多いほど、その中に含まれる繊維、ビタミン、ミネラルの量が多くなります。

サイズによっても分類されます。
・SEMOLA GROSSA/600~800ミクロン
・SEMOLA MEDIA/400~600ミクロン
・SEMOLINO /0~300ミクロン

SEMOLA DI GRANO DURO RIMACINATAと呼ばれ、粒子が粗いセモリナ粉を二度と引いた粉のセモリナ粉もあります。リマチナータと呼ぶこともあり、軟質小麦と混ぜてパスタの整形やパンに使用したりします。粉砕されたセモリナはより明るい色になります。粗いセモリナ粉は濃い色をしており、簡単に見分けることができます。

イタリアのセモリナ粉を、買った時に上記の何かしらの表記が入っているはずです。ちょっと気にしてみてください。また、イタリアではパスタの法律なるものがあり、乾燥パスタはセモリナ粉100%から作らなければならないという決まりがあります。 セモリナ(Semolina)は、粉のひき方で”粗引き”という意味で使われる事が多いです。

【GRANO TENERO(グラーノ テーネロ)】と呼ばれる軟質小麦。硬質小麦に比べると軟らかい粒。水分を吸いにくく、たんぱく質含有量も少ない。この小麦は精製度と外皮の含有量によって分類されます

FARINA“00”
「ゼロゼロ」と呼ばれるこちらの小麦粉は、非常に細かいスチールシリンダーを使い、現代の粉砕をして作られます。繊維、胚芽、ビタミン、塩、アミノ酸等を含む小麦の外部部分が取り除かれた粉となります。最も洗練された小麦粉と表現する人もいます。この小麦粉は、イメージとしてデンプンとグルテンのみといったようなニュアンスでしょうか。この小麦粉を作る目的は、できるだけ白くすることとの事。
膨らませて柔らかいお菓子を作るためや、クリームやソースの濃度を調整したり、パスタに使われたりします。
FARINA “0”
「ゼロ」と呼ばれ、発酵食品の製造に適した粉とされています。ゼロゼロ粉と比べると、若干粗くなり、ふすまも僅かに含まれます。昔、00粉しか使ったことがなかった時代に、はじめて0粉を使った時には味わいの違いに驚かされました。毎日味を見ていたのも影響しているとは思いますが、僅かなふすま等の残量の違いでここまで味が違うのかといった印象でした。
FARINA DI TIPO “1”
「ティーポ イチ」と呼ばれ、ピエトラと呼ばれる石臼で小麦を引いた、いわゆる石臼挽きの小麦粉です。この小麦粉は、小麦胚芽や、ふすまが小麦粉に含まれます。小麦粉は顆粒を揃えるためにメッシュを用いてふるいにかけられます。この小麦粉はより多くのふすまと小麦胚芽を含んでいるので、大くの栄養素を含んでいると言われています。
カラッチョさんは、小麦の甘みや、風味の強さ、旨味、整形や、口当たりのバランスを考えるとティーポ イチが一番おススメだと言っていました。
私も実際に現地で味見をしましたが、その力強い味わいには、誰もが明確に分かる違いがあり、ただただ魅力されるだけでした。00や0に比べて、粒子が荒いので素朴なパンやフォカッチャ、アーモンドやドライフルーツを加えたケーキを作るのに最適と言われています。
FARINA DI TIPO 2”
「ティーポ ニ」と呼ばれます。別名「セミ インテグラーレ」とも言われ、全粒粉に近い小麦粉です。ティーポ イチと比べると粒子の粗さから扱いが難しいかもしれませんが、味わいの深さは格別です。
FARINA INTEGRALE
「ファリーナ インテグラーレ」と呼びます。全粒小麦粉と言われるタイプ。小麦粉が過熱されないように、低速でゆっくりと小麦を挽いていきます。小麦が持つ、すべての栄養成分をそのまま残されていると考えられています。栄養学的には最良とも言われる小麦粉。全粒小麦粉は、その全部分、澱粉、ふすま、小麦胚芽に全粒穀物を含んでいるため、完全な食品との事。この小麦粉は黒パンの製造に使われる事が多いです。ナッツとドライフルーツ入りの固いパンや、全粒小麦パスタ等に加工されます。

日本とイタリアでは小麦粉の分類方法が違います

日本はたんぱく質別。イタリアは細かさ別。
ちなみに、ドイツの小麦粉は、ミネラルの含有量で分類。フランスの小麦粉は灰分の含有値で小麦粉を分類します。国よって根付く小麦粉文化の違いが、粉の分類方で感じ取れます。

長々と小麦の分類のお話をさせていただきましたが、分類からその国における小麦粉の立ち位置がわかるように思います。イタリアでは小麦の香りを大事にしているように私は考えています。

昨今イタリアでは、小規模生産者さんから大規模工場まで様々な小麦粉工場があります。

粉物大国イタリア。

日々体を作る小麦粉を、どのような成分のものを取り入れるのかを考え、工夫して向き合って付き合っていく必要がありますね。オーガニックの小麦粉から、栄養価の高いもの。様々な小麦粉の中から、小麦粉の事を理解したうえでの”選択”が問われる時代ですね。

6~7月にかけては、イタリアでは小麦の収穫時期。
黄金色に染まった小麦畑をぜひ見に行ってみてください。

最後はマンマに粉の扱いを伝授していただきました。体にいい小麦粉を食べてる皆さんは、本当に肌が綺麗。

粉は粉屋さんに聞くのが一番ですね! この経験を我が「ペペロッソ」に生かしていきますので、ぜひご賞味ください。

「ペペロッソ」
住所/東京都世田谷区太子堂1-12-23 第一ゴールドビル1階
営業/11:30~16:00(L.O.15:00) 17:30~24:00
TEL/03-3424-4230
https://www.peperosso.co.jp/

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WRITER PROFILE
今井 和正 Kazumasa Imai
今井 和正 Kazumasa Imai

東京・三軒茶屋「ペペロッソ」 総料理長。1984年、千葉県四街道市生まれ。エコールキュリネール国立辻調理師専門学校卒業後、広尾「イルブッテロ」、南麻布「インカント」副料理長を経て、2015年、「ペペロッソ」総料理長に就任。年に2度、イタリアへ渡り、鮮度の高い❝今❞のイタリア郷土料理の風を三軒茶屋に吹かしている。❝粉❞を愛し、手打ち生パスタやイタリア郷土のパン作りを得意とする。イタリアの地方の小規模生産者さんを大切に想い、イタリアの地方産業の活性化を日々こころがけている。 ❝ペペロッソにしかないイタリアの食材❞シリーズはその活動の賜物である。 www.instagram.com/kazumasaimai/

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