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FOOD 27 Jan 2020

日本酒をイタリアに広めるNIPPON CONCIERGE代表Marco Massarotto(マルコ・マッサロット)さんインタビュー

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なぜイタリア人は日本酒を愛すようになったのか?

ここ10年連続で輸出量が過去最多を更新している日本酒。アメリカ、東アジアへの輸出がほとんどですが、増加率が急増しているのがイタリアです。これは2015年のミラノ万博で日本酒が紹介され、一気に広まったとされます。
そんな日本酒を、日本文化を愛するイタリア人が今回の主人公。「NIPPON CONCIERGE」代表のMarco Massarotto(マルコ・マッサロット)さんにお話を伺いました。

酒の本「Sake. Il Giappone in un bicchiere」191ページにわたって日本酒およびその歴史や文化を解説したマルコさんの著書「Sake. Il Giappone in un bicchiere」

SHOP ITALIA マルコさんが日本酒、日本文化を好きになったきっかけは?
Marco 子供のころから好きでした。合気道をやったり、日本の文学を読んでいました。大人になり、ミラノでデジタルマーケティングの仕事を25年ほどやってきました。10年前に仕事の関係で初来日しました。その時は10日ほどを日本で過ごし、初めての経験をたくさんしました。とくに日本酒との出会いは衝撃でした。イタリアに帰国してからも日本酒や日本文化のことが気になってしかたがなかったのを昨日のことのようにおぼえています。そして決意したのです。日本酒や日本文化に人生をささげたい、と。
SHOP ITALIA すごい決意でしたね!
Marco 日本でしばらく暮らしてみました。そこで日本酒のエキスパートやジャーナリストとたくさん出会うことができました。さらに日本酒の魅力にはまってしまい、その美味しさ、伝統をイタリアにも伝えたいと思いました。当時、イタリア人は日本酒のことをまったく知らなかったのです。

酒の本「Sake. Il Giappone in un bicchiere」「Sake. Il Giappone in un bicchiere」から食と日本酒の関係について

SHOP ITALIA どのようにしてイタリアで日本酒を広めていったのですか?
Marco フェスで日本酒をプロモーションしたり、日本酒について本を書いたりしました。また、日本酒に興味を持ったイタリア人に日本旅行をすすめ、自らツアーコンダクターとして酒造やお茶会、禅、懐石料理などを体験してもらいました。それが高じて、日本を案内する「NIPPON CONCIERGE」という会社を作り、イタリア人に対して旅行やビジネスの企画を手掛けています。2016年からはJSS(日本酒造組合中央会)の顧問になりました。JSSは日本の財務省のブランチです。

Marco Massarotto(マルコ・マッサロット)さん

SHOP ITALIA イタリアで日本酒が広まったきっかけは2015年の万博だったとか。
Marco その前年、2014年にミラノで酒フェスティバルを企画し、2015年にミランEXPOでその第二弾を開催しました。つい5年前のイタリアで日本酒を見つけることは不可能に近かったのですが、今では200種以上の日本酒があります。イタリア人は日本酒に対して興味を抱いていて、ヨーロッパで一番の輸入国になりました。ただし、まだまだ質のいい日本酒が少ないです。その点はイギリスやフランスに劣っています。
SHOP ITALIA なぜイタリアで日本酒が広まったのですか?
Marco いわずもがな日本酒は米からできています。そして北イタリアはヨーロッパ一の米の生産量を誇ります。米を食べる文化がイタリアにはあるのです。おのずと米=日本酒に合うチーズ、肉、野菜がイタリアにはあったといえます。逆に日本人も気づいているはずです、日本酒が世界の料理と合うことを。ピッツァと日本酒の相性は格別ですよ。
SHOP ITALIA 日本人でも積極的に日本酒を飲もうとする人は多くないように感じます。
Marco でも日本で造られた日本酒のうち、わずか3%しか輸出されないのです。全体の消費量が減れば酒造がどんどんなくなってしまいます。日本酒はグローバルドリンクとして認知される必要があります。

Marco Massarotto(マルコ・マッサロット)さんの法被イベント用に作った法被。背中にはマルコさんが好きなことば「一期一会」が

「パルメザンチーズには山廃仕立てが合います」

SHOP ITALIA 日本酒の魅力とは?
Marco まずは独特の味わいが魅力だと思います。ワインやビールとはまったく異なる味わいですよね。だから好みはわかれるとも思います。吟醸を飲んで、「味が薄い」と感じる人がいることも理解できます。でも、日本酒の独特の味わいを楽しめるようになることが非常に大事です。スーパーで売っているような普通酒も好きですし、希少な日本酒ももちろん好きです。さまざまな日本酒に触れることで、その奥にある文化を想像することも楽しいです。
SHOP ITALIA 文化とは?
Marco ボトルやラベル、漢字の名前とその意味、造り方、酒造、歴史などです。私が書いた本で酒とはYUGENだと表現しました。
SHOP ITALIA YUGEN?
Marco 幽玄です。奥深くて、はかり知れないこと。趣が深く味わいが尽きないこと。

SHOP ITALIA お気に入りの日本酒は?
Marco 山廃仕立てや生酛(きもと)造りのような人工的な添加物を使わない古い日本酒が好きです。どちらも伝統的な醸造です。

酒の本「Sake. Il Giappone in un bicchiere」「Sake. Il Giappone in un bicchiere」より日本酒の飲み方をガイドした頁

SHOP ITALIA 日本酒に合うイタリア料理のオススメは?
Marco チーズです。どちらも発酵食品ですから合わないわけがありませんね。
SHOP ITALIA マルコさん一番のお気に入りのチーズと日本酒は?
Marco いっぱいありますが、強いて言うならパルメザンチーズと山廃仕込みや生酛造りなどのコクのある日本酒。あとはゴルゴンゾーラと吟醸もオススメです。ゴルゴンゾーラのスパイシーさと日本酒のフルーティな味わいが合うのです。

SHOP ITALIA 熱燗、冷酒の違いをイタリア人は理解できますか?
Marco イタリア人には、南イタリアのラグジュアリービーチで海老を食べるなら冷酒、北イタリアのスキーリゾート地でフォンデュならぬる燗か熱燗をすすめると説明すると、理解してくれます。雪の中や温泉で楽しむことも日本の文化にはあるんです、と話すとみんな目を輝かせます。

日本を知るにはたくさん食べて飲むこと

SHOP ITALIA イタリア人を日本へ連れてくるツアーについてもお聞かせください。
Marco 10年前にはじめて、年末に14回目のツアーを開催しました。東京、京都、大阪、金沢などを回りました。基本は自由行動ですが、私も同行して電車の乗り換え案内やお店の予約などを手伝います。1日1回はみんなでアクティビティを行います。早朝の瞑想や禅、昼間はお茶会やランチなど。大みそかは大阪で過ごし、そのあと京都で懐石料理を楽しんで、相撲体験をしに行きました。金沢の市場や寿司も忘れられない体験となったでしょう。日本を満喫するにはたくさん食べることが近道ですが、ただ食べるだけではなく、その背景にある文化を学ぶことも同じくらい大事なことです。

「NIPPON CONCIERGE」代表のMarco Massarotto(マルコ・マッサロット)さん

SHOP ITALIA 日本人をミラノでコンシェルジュするプランもあるそうですね。
Marco 日本の旅行代理店とパートナーシップを結んでいるので、ご案内することがあります。イタリアではチーズ工場見学、アペリティーボ体験、建築やデザインを学んだり、バールでのエスプレッソを楽しんだり。ミラノは伝統とモダンが共存する都市です。日本やニューヨークといった大都市の常識が通じない部分があり、それが魅力だったりもします。その魅力を日本人の気持ちもわかる私が説明します。

SHOP ITALIA 夢は?
Marco 歴史的な観点から見れば日本はすごく閉鎖的な国でした。私も初来日のときにそう感じました。イタリアから東京へは11時間、カリフォルニアへは14時間かかります。それなのに、友人に日本へ行ってくる、というと「わお、遠いね!」と言われます。逆にカリフォルニアへ行ってくると、というと「あそうなんだ。じゃまたあとで」と。1990年代、訪日外国人観光客は300万人ほどでした。いまでは3000万人を超えています。インターネットの普及にともない遠い国から近い国に日本はなってきているのです。だからこそ日本のことをしっかりと理解してもらいたいと思いますし、日本人にはイタリアのことを知ってもらいたい、と願っています。その橋渡しをすることが私の夢です。

「NIPPON CONCIERGE」代表のMarco Massarotto(マルコ・マッサロット)さん

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WRITER PROFILE
荻山尚
荻山尚

編集者・著者。ENGINEやCAR MAGAZINEなどの自動車雑誌編集者を経て、LEON副編集長、SENSE編集長を務めるなどファッションへの造詣も深い1972年生まれ。ピッティ・ウォモやミラノのコレクション、国際試乗会などイタリア取材の経験も豊富。ファッション、クルマ、時計など様々なモノを気持ちのいいライフスタイルにいかに落とし込むかを思案する毎日。

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