FOOD 19 Mar 2019

古代から続くカカオ製法を求めて、シチリア島「モディカ・チョコレート」の工場へ

SHARE

イタリア三大チョコレートの一つを生み出す街「モディカ」

italy

シチリア州ラグーサ県「モディカ」にやって参りました。
なぜイタリアの国内線を乗り継いでヨーロッパ最大の島であるシチリア島のモディカまで来たかといいますと、スペインによる統治時代から伝わるカカオの加工技術を継承して、現代においても変わらぬ製法を継承した伝統的製法で作れる『モディカ・チョコレート』の製法を学ぶためであります。
価値あるこのチョコレートの製法による味わいには「距離」を気にさせない魅力が詰まっております。

「モディカ」は、上下二つの街に分かれています。
高台のエリアModica Alta(モディカ・アルタ)と呼ばれる上の街と、レストランや八百屋、雑貨屋さん、そしてモディカ・チョコレート屋さんが多く点在するModica Bassa(モディカ・バッサ)と呼ばれる下の街です。
モディカは「チョコレートの街」とも呼ばれており、34以上のチョコレート屋さんがあるといわれております。

バロック建築を楽しむことのできるシチリア島・モディカの街を歩く

italy

モディカの上の街(モディカ・アルタ)と下の街(モディカ・バッサ)。

italy

Modica Alta(モディカ・アルタ)では階段移動がメイン。スーツケースの事を考えると宿は、Modica Bassaに泊まるのがオススメ。

italy

心臓破りの階段を登ると、美しいモディカの街並みを楽しむ事ができる。

階段を上へ上へと上がっていくと中央にDuomo di San Giorgio(サン・ジョルジョ大聖堂)が見えてきます。

italyバロック建築の傑作とも名高い、壮観なファサードを持つサン・ジョルジョ大聖堂。

イタリアンにふんだんに使われる「カッルーバ」の木

ちょっと余談ですが、街の中には多くのCarruba(カッルーバ)の木があり、たくさんの実をつけていました。
カッルーバは日本ではイナゴ豆と呼ばれています。

italy

カッルーバはFarina di Polpa di Carrube(ファリーナ ディ ポルパ ディ カッルーベ)という粉に加工されて、ジェラートになったり、パスタ生地に練り込まれたりして使われています。
パスタは、タリアテッレやニョッキにする事が多く、マグロのカラスミと合わせるのが有名です。

italyカカオのような甘くスパイシーな香りが特徴的なカッルーバ。

カロリーの低さからチョコレート菓子に混ぜ合わせてカロリーを抑えたりすることもあります。
イタリア国内でのカッルーバの生産は、モディカを含めるラグーサ県だけで70%をしめるそうです。
ラグーサ県以外では、カンパーニャ州、プーリア州、リグーリア州、サルデーニャ州、バジリカータ州、ラッツィオ州が主な産地となります。

シチリア島最古のチョコレート工場へ

italyシチリア島最古のチョコレート工場『ANTICA DOLCERIA BONAJUTO』の目印の看板。

ここからが目的のモディカ・チョコレートのお話しです。
今回モディカ・チョコレートの製造方法から歴史、食べ方等、モディカ・チョコレートの全てを教えてくださったのは『ANTICA DOLCERIA BONAJUTO』。
ここはシチリア島で、最も古いチョコレート工場といわれ、その歴史は1880年から始まっています。
Francesco Bonajuto(フランチェスコ・ボナイユート)が創業し、元祖の方から学びたくこちらの工場に訪問させていただきました。

italy『ANTICA DOLCERIA BONAJUTO』

車で行かれる方は、目の前の八百屋さんで、駐車券を必要な時間の分だけ購入し、フロントガラスのところに見えやすいように置いておきましょう。
警察の巡回も多く、すぐに取り締まりを受けてしまいます。
ランチタイムは駐車スペースがすぐにいっぱいになってしまうので、早めの到着を。

モディカ・チョコレートの遥か昔から受け継がれる製法と歴史を学ぶ

italy

店内に入るとモディカの歴史とモディカ・チョコレートの歴史を丁寧に教えてくれます。
ビデオ等も使用して、カカオの原産地であるエクアドル(フローラルな風味)、マダガスル(フルーティー)、ペルー(強い風味)、ガーナ(スパイシー)、ベネズエラ(ビター)、タンザニア(溢れる果実味)等の地域の説明も映像を使用しイメージしやすいようになっており「カカオ」についてよくわかります。

「神々の食べ物」カカオとは

italy

「カカオ」とは木、実、種を指します。
実単体ではCabossa(カボッサ)といい、様々な名称を持ったフルーツとなります。1個の実からは約40-60個の種を採る事ができます。
パパイヤみたいな形をしていて、中にそら豆のような大きさの種が、「カカオパルプ」と呼ばれる白いホワホワの綿状の物に包まれた状態になっています。
収穫したカカオは種を取り除きます。
カカオ豆は約6日間熟成させ、日の当たる場所に広げて太陽の力で天日干しにします。40-45℃の低温でローストすることで、原料となるカカオ豆へと姿を変えていきます。

チョコレート工場『ANTICA DOLCERIA BONAJUTO』では”il gusto di Sicilia.(シチリアの味)”をテーマに様々な風味のタイプが用意されており、全ての商品を味見する事ができます。
グルテンアレルギーの方や、Hypertension(ハイパーテンション)と呼ばれる高血圧の方向けのタイプもあり健康面へのアプローチも取り組んでいます。20年前は、バニラ味が主流だったそうです。時代の変化にも敏感に対応できる力が革新となり、新たな伝統になる事を感じました。

METATE(メターテ)と呼ばれるカカオ豆を粉砕する伝統的な道具。

METATE(メターテ)を使ってカカオを加工する過程を再現した味のあるミニチュア。

『Museo Cioccolato Modica(モディカのチョコレートミュージアム)』の看板にもMETATEの写真が使われており、この道具がいかに大事かを知ることができます。

モディカ・チョコレート作り見学

いよいよモディカ・チョコレートの製法です。
カカオ豆をすり潰したカカオマスと、砂糖を混ぜ合わせます。
40℃の温度でカカオマスを作業のしやすい形状にします。
バターミルクは一切添加しません。スパイスや、塩、カラスミやハーブ等で香り付けする時にはこの時に一緒に混ぜ合わせます。

この砂糖がモディカ・チョコレートの個性的なテクスチャーの命。

混ぜ合わさったら台の上に取り出します。
40℃の温度で調理するため、砂糖が溶け出さずにモディカ・チョコレート特有のジャリジャリとした食感を生み出しています。

型には折って食べやすくなるように線が入っています。

台の上に取り出した生地を軽くカードで混ぜ合わせたら専用の型に入れていきます。1個あたり100gの重さです。

この時はまだ表面に艶がありません。この後、「Musica al cioccolato(ムーズィカ アル チョコラート)」または「チョコレートミュージック」と呼ばれる工程を経て生地の表面に艶が出てきます。

生地を入れた型を木製の大きなバットに移し、コンサートの準備をします。
大きく、激しく、型の中の生地が飛び出さないギリギリの強い振動を生地に与えるため、かなり大きな和太鼓を打つような打撃音がキッチン中に響き渡ります。
この時の打撃音が「チョコレートミュージック」なんだそうです。
リズミカルに振動を与え続けることにより、生地の中に含まれる天然の油脂を生地の表面に浮かびあがらせていきます。


このように、先程とは見違えるほどに表面が滑らかになり、テカテカと光るくらいにツヤが出ます。
これを約3℃の冷温で、2時間程冷やし固め完成です。

エスプレッソと一緒にモディカ・チョコレートの味わい方

オススメの食べ方を聞いたら、『エスプレッソと供にどうぞ!!』と教えていただきました。
一口サイズに皿の上で割って食べるのが通なのです。
『割った時に出るチョコレートの破片をエスプレッソに入れたら最高よ!!』とも教えていただきました。
現地感溢れる食べ方で楽しむのも郷土料理の楽しみ方の1つではないでしょうか?

Conquistadores(コンキスタドーレス)を通してヨーロッパに広まった古代のプロセスが、今もなお残されている街シチリア島のモディカ。
ユネスコ世界遺産を有し、活気溢れる街並。古代ドルチェリアの味を守る街。
イタリア三大チョコレートであり、モディカ美食文化の代名詞でもあるモディカ・チョコレート。
長い間残したいと人々を魅了し続けている”古代の仕草”を施した味わいを皆さまもぜひお確かめ下さい。

この記事を読んでいる人にオススメの記事はこちら
サルデーニャ島カステルサルド 芸術性溢れる【籠文化】に触れる 〜伝統を縫い合わせよう〜
イタリア・トリノの真ん中。地元民に愛されるカフェ「ストラッタ」でビターなチョコレートを
イタリア伝統のクリスマスケーキ「パネットーネ」を求めて

WRITER PROFILE
今井 和正 Kazumasa Imai
今井 和正 Kazumasa Imai

東京・三軒茶屋「ペペロッソ」 総料理長。1984年、千葉県四街道市生まれ。エコールキュリネール国立辻調理師専門学校卒業後、広尾「イルブッテロ」、南麻布「インカント」副料理長を経て、2015年、「ペペロッソ」総料理長に就任。年に2度、イタリアへ渡り、鮮度の高い❝今❞のイタリア郷土料理の風を三軒茶屋に吹かしている。❝粉❞を愛し、手打ち生パスタやイタリア郷土のパン作りを得意とする。イタリアの地方の小規模生産者さんを大切に想い、イタリアの地方産業の活性化を日々こころがけている。 ❝ペペロッソにしかないイタリアの食材❞シリーズはその活動の賜物である。 www.instagram.com/kazumasaimai/

PR

モードとアバルトの美しき共通項 ピッティ・イマージネ・ウオモ95 現地リポート

ABARTH Scorpion Magazine
PR

サソリ160匹、ワイナリーに放たれる —これが本場イタリア式オーナーズ・ミーティングだー

ABARTH Scorpion Magazine
PR

FIATオリジナルジェラートを、シンチェリータで召しあがれ

fiat magazine CIAO!
PR

言葉を持つ靴職人、花田優一の理想の職人像は「精神鍛錬を積んだ人」

Mondo Alfa
PR

首都高C2でアバルト595コンペティツィオーネと戯れる。

ABARTH Scorpion Magazine
PR

ルパンがフィアットを愛する理由。『ルパン三世 PART5』浄園祐プロデューサーインタビュー

fiat magazine CIAO!