FEATURE
FOOD 08 Apr 2019

イタリア食文化の新たな地平 フィレンツェの高級食材フェア『TASTE』

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2019年3月9日〜11日フィレンツェでは、プロ向け高級食材フェア「テイスト」が開催されました。
15回目を迎えた2019年は約400の出展者が参加。
“食の宝庫”イタリアを象徴する伝統食品を披露するブランドとともに、個性的な新製品を初公開するスタンドも数々みられました。

青緑色のパスタやチーズ、チョコレートの正体とは

今回、デリカテッセンやレストランの目利きバイヤーたちの視線をひときわ集めていたのは、中部トスカーナ州グロッセート県の企業「セヴェリーノ・べカーリ」のブースでした。
パスタやチーズ、チョコレートなど、陳列されたすべての食品が青緑色です。
「カラーの正体は“スピルリナ”。藍藻類の一種で、古代から豊富な栄養素を含む食材として知られていました」と社長のトンマーゾさんは説明します。
本来シリアル栽培を手がけていたという彼は、水槽でスピルリナの培養に成功。
話題のスーパーフードとして、伝統食材に新たな価値が加わることを期待しているといいます。

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スーパーフードとして注目されている藍藻類の一種・スピルリナを配合した、青緑色のパスタやペコリーノ・チーズ

港町ならではの魚を使った驚きの味

食べてビックリ!を体験させてくれたのは、港町リヴォルノを本拠とする「サルメリエ・ディ・マーレ」のスタンドです。
一見ボローニャ産ソーセージ「モルタデッラ」に見えて、実はマグロ
ラード(豚の背脂)のように見えるのは、なんとイカが原料です。
本業であるレストランではシェフを務めるオーナーが、メニューに載せていた品を多くの人に知ってもらうべく商品化したものです。
来場者からは「魚料理はつい調理が面倒で敬遠してしまいがちだが、これなら気楽に食べられる」「家に友人を招いたとき驚かせることができるかも」との声が。
興味津々で試食する人も後を絶ちませんでした。

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脂肪に見えるように角切りのイカが練り込まれたマグロから作ったモルタデッラ。イカを塩漬けにして調理したもの(右手前)は、まるでラードのよう。

キュートなボトルに入ったあなただけのオリーブオイル

南部プーリア州から出展したピエトロ・パルミエリさんが紹介していたのは、キュートなボトル入りエクストラ・ヴァージンオリーブオイル「サルトリア・アグリーコラ」です。
「コンセプトは“あなただけのオリーブオイル”。お客様はチェックシート上で、辛味、苦味、香りなどを5段階で指定してオーダーできます」とピエトロさん。
サルトリア(仕立て師)が身体にぴったりの服を縫い上げるごとく、客の好みに合った味を届けたいという想いから生まれたものといいます。
不本意な風味を顧客が作り上げてしてしまう怖さは?との質問には、「(ベースとなる)自社製品への揺るぎない誇りがあります」と自信たっぷりに答えてくれました。
ちなみにピエトロさんの装いは、商品のネーミングにふさわしく、まるでファッション見本市の出展者かと見紛うほどエレガントでした。

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客が自分の好みをブレンドできるエクストラ・ヴァージンオリーブオイルを紹介。スマートフォン・アプリからのオーダーも可能です。季節ごとに洋服を変えるように、ボトルのデザインも2ヶ月ごとにチェンジするそう。

地元貴族の要望で創業した120年以上の歴史を誇るパスタ工房

中部アブルッツォ州の「ヴェリーニ」は、1898年に初代が地元貴族の要望で創業したパスタ工房です。
今回出品した「パスタ・アフミカータ」は、生地に燻製風の香り付けを施した新製品。
同時に、舌触りやソースの絡みやすさを向上させるべく、成形には金の口金を用いています。
4代目社主フランチェスカ・ペトレイ・カステッリさんは、「原料や職人技にこだわり抜いたおかげで、我が社の製品は、数々の著名シェフや有名レストランに認められるまでになりました。
それに甘んずることなく、挑戦を続けていきます」と、120年以上続く老舗の抱負を語ってくれました。

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老舗パスタメーカー「ヴェリーニ」の新商品は燻製風味のパスタ(左)。袋を開封した途端に芳ばしい香りが広がります。右のピーマン型は、肉などを詰めてパーティーのフィンガーフードにするのもオススメとか。

ワインだけでない、イタリアの小さな工房で造られる自慢のクラフトビール

かつてイタリア市場でビールといえば、ドイツをはじめとする外国系や北部イタリアの一部企業による量産品でした。
ところが、近年は国内各地の小さな工房で造られたクラフトビールが、量産品の市場を奪う勢いで登場してきています。
彼らの隆盛は、従来商店でワイン棚の陰にひっそりと陳列されていたビールのコーナーが、みるみる拡大するという副次効果ももたらしました。

中部ルッカ県ピエトラサンタにある2011年創業の「ビリィフィチョ フォルテ」も、そうした新興ビール工房のひとつです。
「若い頃から自分でもビール党だった私は、飲むだけでは飽き足らくなりました。独学ののち、まずは自宅キッチンでビール造りを始めたのです」。
そう語るのはオーナーのフランチェスコ・マンチーニさん。
その後イタリアビール協会の一員となり、先輩や仲間からさらなる醸造の知識を吸収し自らの工房開業に漕ぎ着けました。

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ビールへの熱き想いを語ってくれた「ビリィフィチョ フォルテ」のフランチェスコさん(中央)。現在はレストランへの卸が中心。「メニューに載る価格は従来のビールより高くなりますが、味にうるさい方には好評を頂いています」。ボトルを何重にも重ねたラックは、ストーンデザイナー時代の彼による仕事です。

昨今のビール・ブームについて、フランチェスコさんは分析します。
「私はワイン好きの人が、ビールへ移行してしまったとは考えていません。より選択肢が広がったと捉えるべきでしょう。20年ほど前イタリアのクラフトビール生産者は僅かで、そのほとんどを輸入に依存していました。それが今では私たちイタリア人も美味しいビールを造る技術を習得しました。その努力が認めてもらえていると信じたいです」。

創業8年。
前職は?とフランチェスコさんに訊ねると意外な答えが返ってきました。
「ピエトラサンタに近い街、カッラーラはイタリアが誇る大理石の産地です。もともと私はストーンデザイナーでした」。
彼のビールへのパッション(愛情)はアルコール度よりも高く、そして、新しい道への決意は、大理石よりも硬かったに違いありません。

プロだけでなく、一般入場可能な時間帯も

このイベントは原則としてプロ向けトレードフェアですが、20ユーロのチケットを購入すれば一般でも入場できる時間帯が設けられています。
しかも嬉しいことに、会場出口付近には販売コーナーがあるので、購入しない手はありません。

出口付近に設けられた販売コーナー。会場内の全商品ではありませんが、気に入ったものがあれば購入できるチャンスです。

陽気なイタリア人出展者たちが差し出す生ハムやサラミの薄切り、チーズにワイン、そしてスイーツ。
まるで縁日に潜り込んだようなワクワク感と共にテイスティングを続けていると、フルコース料理に似た満足感に包まれます。
そしてイタリア食文化の伝統・最先端の双方に触れるうち、それらが目指すものはいずれも“食べる人の美味しい幸せ”であることに気づくはずです。

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WRITER PROFILE
大矢 麻里 Mari Oya
大矢 麻里 Mari Oya

イタリアコラムニスト。東京生まれ。短大卒業後、幼稚園教諭、大手総合商社勤務を経て1996年からトスカーナ州シエナ在住。現地料理学校での通訳・アシスタント経験をもとに執筆活動を開始。NHKテキスト『まいにちイタリア語』『朝日新聞デジタル』などに連載多数。NHK『マイあさラジオ』をはじめラジオでも活躍中。著書に『イタリアの小さな工房めぐり』(新潮社)、『意大利工坊』(馬云雷訳 華中科技大学出版社)、『ガイドブックでは分からない 現地発!イタリア「街グルメ」美味しい話』(世界文化社)がある。

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