COLUMN
FASHION 18 Jun 2018

ピッティ・ウオモ2019春夏レポート第2弾。「伝統」と「革新」が紡ぐクラシコイタリアの未来。 | メンズファッション

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2018年6月12日から15日までフィレンツェで開催された「ピッティ・イマージネ・ウオモ」では、世界に名だたるブランドが個性的なアプローチでコレクションを展開しました。各ブランドを牽引するリーダーたちの言葉には、イタリアのファミリー企業に共通するフィロソフィーが窺えます。

LARDINI(ラルディーニ) イタリア随意のビッグブランドに押し上げた家族の絆

1978年にアドリア海に面した港街アンコーナで誕生したラルディーニは、創業40周年を祝いました。ラルディーニといえばすぐに思い浮かべる花形のラペルピンは、男の快楽主義とロマン主義のシンボルです。

創業者でありクリエイティブ・ディレクターのルイージ・ラルディーニ氏は、「今回のコレクションのテーマは『フレンチ・リビエラ』。1950-60年代にセレブや文化人が過ごした、南仏サントロペに代表されるリゾート地。そこをイメージしたマリンスタイルの提案です」と説明します。

多くのファッショニスタから、着こなしの手本として憧れられるルイージ氏。歴史を遡れば、彼は若干18歳にしてメンズコレクションを発表。兄や姉妹のサポートを受けて始めた仕立て工房が原点でした。そして今日、会場でかいがいしくルイージ氏をサポートする女性に声をかけると、なんと彼の娘さんでした。若くしてファッション業界へ船出したルイージ氏は、家族という乗組員を増やしながら大いなる航海を続けています。

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ラルディーニのハイグレードコレクションSARTORIAでは、アースカラーをキーワードにパナマハットを被った粋な男たちの着こなしを展開。テンセルやバンブー繊維などの天然素材を用いて夏の爽やかな着心地を追求。

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ファッションイラストレーション作家ルネ・グリュオーが描く世界観をテーマにしたコレクションより。ジャケットに施されたプリントは、ぼかしを効かせ、不規則なリズムを刻んでいます。ロートレックに影響されたといわれるグリュオーが描いた繊細な線を表現したものです。

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「最上級の素材を、最大限に活かせる技術を培ったことが、40年の歩みに繋がりました」と語る、創業者兼クリエイティブ・ディレクターのルイージ・ラルディーニ氏。イエローやオレンジなど多彩なトーンで楽しむマリンスタイルも提案しました。

LUBIAM(ルビアム) イタリア国内の自社工場生産へのこだわりの理由

創業百余年の歴史を誇る名門ルビアムは、イタリアで最も古いファクトリーブランドの1つです。ピッティ・ウオモでは毎年ハイグレード、カジュアル、セレモニー、テイラーメイドの4つのラインを披露しています。ハイブランドラインLuigi Bianchi Mantovaを統括するのは、デザイナーのジョルジョ・ロザッツァ氏。今回はブラウンやベージュをベースに、グリーンやオレンジを組み合わせた気品あるコレクションを展開しました。

ライバルのブランドがひしめく中で、「ルビアムの強みは?」との質問に、ロザッツァ氏はこう答えます。「1つめは、創業家が代々経営を引き継いでいることです。大手メゾンの傘下に収まることなく堅実で健全な経営をしてきた自負があります。2つめは、生地選びから最終工程まで外注に頼らず自社生産をしていること。それによって顧客のニーズ、社会の潮流にも柔軟に対応できることは我々の誇りなのです」。

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伝統的な仕立て技術を反映した上品なコレクションを展開した、ルビアムのハイブランドラインLuigi Bianchi Mantova。生地はイタリア最高峰の生地生産地であるピエモンテ州ヴィエッラのものを使用しています。

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ルビアムのハイブランドラインLuigi Bianchi Mantovaより。来季はグレーをベースにした商品展開にも力を入れたいとか。「アクセントとなるグリーンが重要。サルヴィアやミントなど自然にある色のように、いかに深い色味が表現できるかが鍵です」とデザイナーのロザッツァ氏。

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ルビアムのハイブランドラインLuigi Bianchi Mantovaを統括するデザイナーのジョルジョ・ロザッツァ氏。メンズファッションの世界に身を置いて35年、ルビアムでは28年のキャリアとか。サルトリアの要素とカジュアルテイストを絶妙なバランスで表現しています。

TAGLIATORE(タリアトーレ) 卓越したカッティングが生むメンズファッションの真髄

タリアトーレのブースでは、オーナーで、ひときわ目を引く伊達男ピーノ・レラリオ氏が迎えてくれました。イタリア最南端プーリア州で誕生したタリアトーレは、ウエストラインを引き締めたセクシーなデザインのジャケットで知られます。ピーノ氏はブランドの主でありながら、デザイン、パターン、縫製も手がける多忙な日々を送っています。

「今回はボルドーやテラコッタカラーがメインのシックな男の装いがテーマです。生地には清涼感と触り心地に定評があるジーロ・イングレーゼを採用。着心地を追求しつつも、ブランドのアイデンティティである男の色香漂うフォルムは守るべきと考えます」とピーノ氏。靴のアッパー裁断職人を祖父に、仕立て師を父に持つ彼。ブランド名のタリアトーレとは、イタリア語で「裁断師」の意味。今日“裁断の魔術師”と呼ばれるになった彼の、祖父に対するリスペクトの表れなのです。

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タリアトーレの2019春夏コレクションより。シックなボルドー×ホワイトは大人の伊達男のコーディネイト。ボタンやステッチなど、細かなディテールを選んでパーソナライズできるシステムは、タリアトーレ強みのひとつでもあります。

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個人的にバイク好きであるというタリアトーレのオーナー兼デザイナーのピーノ・レラリオ氏が、新たな試みとして発表したレザーコレクション。シャープで挑戦的なデザインのジャケットには、首元のスカーフで甘さをプラス。

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タリアトーレのオーナー兼デザイナーのピーノ・レラリオ氏。「父の仕事場が私の遊び場でした。振り返れば10歳頃には、父の傍らで何かしら手を動かしていましたよ」。

TOMBOLINI(トンボリーニ) 着心地と美しさへのたゆまぬイタリア職人の追求

最後に紹介するトンボリーニは、1964年創業の実力派ファクトリーブランドです。創業者の娘で現社長のフィオレッラ・トンボリーニ氏は、美しさを保ちつつ機能性に長けた製品開発に力を注いできました。わずか300gという、超軽量かつ撥水性能も備えたジャケット『ゼロ・グラヴィティ』は、その名のとおり「無重力のような着心地」と高い評価を得てきました。今回はその進化系として、洗濯機で丸洗いできる『ZG WASHABLE』を披露。

「老舗ブランドでありながら、常に革新的な技術を追う姿勢はどこから?」と質問すると、フィオレッラ氏は壁面に大きく書かれていた文字を指さしました。“未来は歴史と結ばれている”。創業者である彼女の父エウジェーニオ氏がモットーとしていた言葉でした。「父から私へと伝統のバトンは渡されました。今度は私の代で重ねた革新を、新しい伝統として次の代に受け継ぐ。それが私の使命です」と彼女は微笑みました。

21世紀の今日においても、イタリアにはファミリー経営の企業が少なくありません。家族同士の結びつきを重んじ、代々受け継がれた仕事を守り続けています。しかし、彼らは決して伝統に甘んじることなく、革新的な技術を追求しています。気高いサルトリアの精神と未来を見据える力。この両輪で、これからも世界を魅了するプロダクトを作り続けてくれるに違いない。そう思わせてくれた初夏のフィレンツェでした。

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トンボリーニの超軽量仕立てゼロ・グラヴィティのラインから。洗濯機で丸洗いができるウォッシャブルスーツ『ZG WASHABLE』を発表。軽さ、優雅さ、着やすさに、手入れの容易さも加わりました。

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ファンクショナルとデザインの両方を満足させるのがトンボリーニのプロダクト。こちらもゼロ・グラヴィティのラインから発表された、重さわずか300gのサファリジャケット。

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トンボリーニ社長のフィオレッラ・トンボリーニ氏と子息のシルヴィオ氏。「これからは息子の時代です。頼もしい跡継ぎに大いに期待しています」。

(TOP写真)ピッティ・イマージネ・ウオモ2019春夏コレクション会場の中庭に集うファッショニスタたち。

【関連記事】ピッティ・ウオモ2019春夏レポート第1弾。クラシコイタリアを代表するラグジュアリー・ブランド 「ブルネロ クチネリ」が愛される理由。

【関連記事】トレンドは「ラグジュアリー・アスレジャー」。ピッティ・ウオモ2019春夏レポート第3弾。

WRITER PROFILE
大矢 麻里 Mari Oya
大矢 麻里 Mari Oya

イタリアコラムニスト。東京生まれ。短大卒業後、幼稚園教諭、大手総合商社勤務を経て1996年からトスカーナ州シエナ在住。現地料理学校での通訳・アシスタント経験をもとに執筆活動を開始。NHKテキスト『まいにちイタリア語』『朝日新聞デジタル』などに連載多数。NHK『マイあさラジオ』をはじめラジオでも活躍中。著書に『イタリアの小さな工房めぐり』(新潮社)、『意大利工坊』(馬云雷訳 華中科技大学出版社)、『ガイドブックでは分からない 現地発!イタリア「街グルメ」美味しい話』(世界文化社)がある。

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