COLUMN
FASHION 26 Feb 2019

世界のファッションに多大な影響を与えたモンツァの帽子産業の展覧会〜イタリアンアート探訪記

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今から遡ること約150年前、1857年にジュゼッペ・ボルサリーノによって創業されたボルサリーノは、イタリアを代表する帽子メーカーです。
トップ部分にくぼみがあり、前の部分がつまんだ形が特徴のソフトハットは「ボルサリーノ」の世界的な呼称が付くほど、その名前と同社が作り出す帽子は、その品質とデザイン性の高さは現在でも高い名声を得ています。

そんなボルサリーノを生み出したイタリアで、その帽子産業が最盛期を迎えるのは、18世紀〜19世紀。
そして、その帽子産業において大きな役割を果たしたのが、モンツァでした。
ミラノがあるロンバルディア州の三番目に大きな都市「モンツァ」は、ミラノから電車で約10分ほどの場所にあり、F1が開催されるモンツァ・サーキットがあることでも有名です。

“帽子の首都”と呼ばれた、帽子産業の最盛期

フランス語で帽子(シャポー)を意味する「CHAPEAU!」とタイトルがつけられた展覧会が、モンツァ市立美術館で開催されています。
「L’industria del cappello a Monza tra ‘800 e ‘900(18世紀〜19世紀におけるモンツァの帽子産業)」というサブタイトルをつけられたこの展覧会では、イタリアのみならず、世界の帽子ファッションの礎を築いたモンツァの帽子産業の歴史を知ることができる貴重な展覧会です。

12世紀にウール産業が盛んだったモンツァでは、18世紀に入ると帽子というウール製品が大きなマーケットとなりました。
最盛期となる1870年〜1920年には、12,000人とも言われる膨大な労働者が帽子産業に携わり、モンツァは「Capitale del cappello (帽子の首都)」とも呼ばれ、モンツァの帽子はグローバルプロダクトへと成長を遂げました。

年間200万個の帽子を世界に送り出した、モンツァの巨大帽子産業

当時の工場内は、羊、うさぎ、ビーバー、カワウソなどの動物の毛を高熱で洗毛し、埃まみれで熱気を帯びたとても厳しい労働環境でした。また、一つの帽子が完成するまでに約30の工程を手作業で進める帽子製造は楽な仕事とは言えるものではありませんでしたが、帽子製造のニーズに対応するために多くの労働者を必要としました。
しかし、当時マーケットは拡大する一方でピーク時には、一年間に200万の帽子を生産し、需要に対する生産が追いつかないほどで、当時の労働者の多大な労力がこの産業を支えました。

当時の帽子産業においては、モンツァの4大カペルフィーチョ(帽子工房)と呼ばれる、カンビアンキ、カペルフィーチョ・モンツェーゼ、カロッツィ、ヴァレラ&リッキがしのぎを削りあっていました。また、各工場で生産される帽子の約8割は、欧米の国々はもちろんのことアジアや南米など世界各国へ輸出され、イタリア、モンツァブランドの帽子は世界的に名声を高めることとなりました。

しかし、世界第二次大戦のおりに、海外からの安価な物資の入手が困難となり、さらに、時代に伴うヘアスタイルの変化やファッションスタイルの変貌に伴い、帽子の需要の激変、オートメーション化が進んだことにより、モンツァの帽子産業は第二次世界大戦の終戦とともに衰退を遂げることとなりました。

現在、モンツァには昔ながらの製法で帽子の製造をしている工房は1953年創業のViemercati Hatsのみで、丁寧に作り上げられる高品質の帽子は海外にも多く輸出されています。中でも、モンツァの帽子産業の最盛期のような帽子の需要はなくなった今、一般の帽子の他に、年間約7,000個のユダヤ信者のラビの帽子を製造し続けています。

[ Viemercati Hats ]

●住所:Via Macallè, 2, 20900 – Monza
●公式サイト:https://vimercatihats1953.com

イタリアンモードに欠かせないファッションアイテム“Cappello”

世界4大コレクションの一つ、ミラノファッションウィークが2月19日〜25日まで開催されることもあり、この時期のミラノ市内の広告は華やかなファッションの広告やイベントが目立ちます。最先端のモードもイタリアには欠かせないカルチャーの一つですが、それまでに培ってきた背景や長い歴史は現在のモードに大きく影響を与えてきました。
なかでも、イタリア語で“Cappello”と呼ばれる帽子は、紀元前4世紀から存在するものとされ、長きに渡り、個性や役割、そしてステイタスを表す重要な役割を果たしてきました。

ミラノからほど近いモンツァの街。ミラノのモードの競合とも言われるほど、ファッションとは深い関わりを持った街としても知られています。モンツァにはモンツァ・サーキットがある広さ6,88㎢の広大な敷地を誇るParco di Monza(モンツァ公園)や、17世紀に建てられたVilla Reale(レアーレ邸)など、ミラノとは異なる観光スポットがたくさんあります。ミラノに訪れた際には、おしゃれな街「モンツァ」まで足を伸ばしてみるのもお勧めします。

[ Muei Civici Monza(モンツァ市立美術館) ]

●住所:Via Teodolinda 4, 20900 Monza
●公式サイト:http://www.museicivicimonza.it

WRITER PROFILE
Manami Palmieri
Manami Palmieri

イタリアのミラノ在住、フォトグラファー兼ライター。アメリカの大学にて芸術学部を卒業後、日本の一部上場企業に就職しアートディレクターとして活躍。国内外で写真展を開催するなど、アーティストとしての幅を広げ、2016年に渡伊。結婚を機にイタリアに移住。現在は、写真と文字でファッションやアートを中心としたグローバルな最新情報を発信中。

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