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FASHION 25 Aug 2018

未来のマエストロ(職人)を育成する「ダミアーニ・アカデミー」 ジュエリーの里が取り組む社会貢献

大矢 麻里 Mari Oya
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恵まれた資源と複雑な歴史から生まれた


ハイエンドジュエリーの発表の場として知られるパリ・オート・クチュール・ファッション・ウィークで発表された新作コレクション「エモツィオーニ」。ターコイズとともにダイヤをあしらったそのデザインは、イタリアのアマルフィ海岸やリビエラの色をイメージしたもの。

イタリアン・ハイエンドジュエラーの「DAMIANI(ダミアーニ)」はこのほど、若手ジュエリー職人の育成を目的とした講座「ダミアーニ・アカデミー」を開設すると発表しました。講座は無料で、本社所在地である北部ピエモンテ州ヴァレンツァの工房で実施されます。


花をモチーフにした「マルゲリータ」は、ジュエリーをこよなく愛した同名のイタリア王国初代王妃へのオマージュとしてデザインされました。

講座の詳細を説明する前に、ヴァレンツァの街について紹介しましょう。イタリア最高峰のジュエリー生産地として知られるヴァレンツァには、1924年創業のダミアーニをはじめとする著名ブランドの多くが工房を構えています。


ダミアーニの人気コレクション「スピッキ・ディ・ルナ」(イタリア語で「三日月」の意味)。こちらはホワイトゴールドとダイヤモンドを組み合わせた存在感ある華やかなリングです。

地域では、いにしえから街を流れるポー川で砂金の採取が行われ、次第に金細工が発展してゆきました。イタリア半島が国家統一されていなかった16世紀には、隣接した国との戦いに幾度となく破れ、フランス王フランソワ1世やスペイン王のカルロ5世などの統治下に置かれるという苦難な過去もありました。しかし、王侯貴族の往来により、彼らが身につける宝飾品の需要が高まったのです。それが19世紀に入ると近代産業へと発展し、名実ともにジュエリーの街を歩むきっかけとなりました。

職人を目指す若者を応援

そのヴァレンツァに2018年6月、新たな財団が設立されました。ジュエリー企業18社によるもので、最大の目的は3年間で1000人の若手ジュエリー職人を育成することです。冒頭で紹介した「ダミアーニ・アカデミー」は、まさにその取り組みを形にしたものなのです。


ダミアーニの職人による、宝石を貴金属に留める工程。この「セッティング」とよばれる作業は、石や接合部の耐久性、および装着感に深く関わるため、卓越した技術力が求められます。太くたくましい指先に職人の自信と誇りが宿ります。

講座では大きく分けて2つのテクニックを学びます。ひとつは宝石を貴金属に留めるセッティングの技法、もうひとつは貴金属加工や細工の技術です。受講者は6週間(240時間)をかけて、工具の使い方から、ジュエリー製作まで一連の技術習得を目指します。

窓口を務めるのは総合人材サービス企業大手「マンパワー」で、すでに同社のイタリア語ウェブサイトでは受付が開始されています。応募資格は高校か専門学校卒以上、または貴金属加工業の従事経験者です。審査により、20名が2018年8月27日からの講座に参加できます。

地域産業の発展と雇用対策

無料であることともに受講者にとって嬉しいのは、将来ダミアーニ社に採用される可能性も開かれていることです。「ダミアーニ・アカデミー」のミッションに、人材雇用への貢献も含まれているためです。

背景にはイタリアの深刻な失業問題があります。欧州では2008年のリーマンショックと、続くユーロ危機によって雇用状況が大きく悪化しました。その後失業率は多くの国で改善に向かういっぽう、イタリアでは15歳〜24歳の若年層の失業率が32.2%と、依然厳しい状況が続いています(2017年12月イタリア中央統計局調べ)。

にもかかわらず皮肉なことに、習得に期間と忍耐を要する職人の人手不足は解消されていません。企業側のニーズと、若者の職業選択のミスマッチは、今日イタリアが抱える大きな課題です。とくに地域産業にとって、未来を担う人材育成は急務です。イタリアン・ジュエリーの里で、「ダミアーニ・アカデミー」の取り組みが一条の光となることを期待したいものです。


こちらもパリ・オート・クチュール・ファッション・ウィークで発表された「ミモザ」コレクションの新作リングで、女性らしさへのオマージュがテーマ。同系色の石(グリーンのトルマリン、サファイア、ガーネット)にダイヤをマリアージュさせたリングで、匠の技が生み出すグラデーションに目を奪われます。


こちらも「ミモザ」のコレクションより。珊瑚とともに多数のルビーを贅沢にあしらうことで立体感を表現したネックレス。ダミアーニが得意とする躍動的な曲線美が光ります。


アクアマリンとブルーサファイアの透明感が、煌めく青い海をイメージさせるリング。こちらも「ミモザ」コレクションで、夏の装いをグラマラスに演出します。

WRITER PROFILE
大矢 麻里 Mari Oya
大矢 麻里 Mari Oya

東京出身。幼稚園教諭、商社勤務を経て、1996年にイタリア・トスカーナの古都シエナに移り住む。国立シエナ外国人大学で学び、現地の料理教室の通訳兼助手に従事したのち、新聞・雑誌への連載を開始。NHK『マイあさラジオ』をはじめとするレポーターとしても活躍中。著書に『イタリアの小さな工房めぐり』(新潮社)がある。

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