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CULTURE 16 Jan 2020

林由紀子の土着的イタリア田舎暮らし日記 第三話「家族が喜ぶ顔を想像しながら作るマンマの手料理」

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寒い季節に作る中部イタリアの伝統食

皆さん、明けましておめでとうございます!
さて、前回の田舎暮らし便りでは、冬支度についてお話しましたが、今回は冬ならではの食べ物や料理について、美味しく楽しいエピソードをいくつかお話しようと思います。
イタリアはなんと言っても食いしん坊の国。寒い冬に美味しいものを欠かさないよう、多くの家庭でパスタはもちろん、乾燥ハーブ、塩漬け、お菓子など色々な食べ物を用意します。どの地域でも、収穫の少ない冬に向けて、色々な保存食が作られますが、それは大切な冬のタンパク源であったり、ビタミン源であったりします。またクリスマスなどお祭りごとに向けての大切な食事の用意だったりします。

ローズヒップの木初霜が降りたらローズヒップを収穫する時期、ビタミンたっぷりのお茶になります

私の住むマルケ州は中部イタリアになりますが、秋の終わりから年明けまで美味しいもの作りが続き、女性は家族が喜ぶ顔を想像しながら、忙しくも楽しくその準備に励むのです。
では、冬の伝統食、どんなものがあるのか、ご紹介していきますね。

冬の始まりを告げる「オリーブの塩とハーブ漬け」

収穫したオリーブツヤツヤのオリーブが出回るようになると、仕込みの季節

10月から11月にかけて行われるオリーブの収穫。この地域のオリーブは、ほとんどがオリーブオイル用に栽培されているものですが、その一部を漬物にする習慣もあります。
傷のない綺麗なものを使って、野生のフェンネルの茎と皮つきのにんにく、あら塩と一緒に漬け込み、数日おくとしっかり水分が出て来ます。これを毎日瓶ごとシェイクして塩分が均等にオリーブに回るようにしながら、10日から2週間ほど漬け込んでおき、最後にオレンジの皮のみを入れて香りを付けます。しっかり香りが付いたら水を捨てて出来上がり、という簡単なもの。

オリーブをフェンネルやにんにくと漬けたもの野生のフェンネルとにんにくがほのかに香る

これが食卓に上がらないとマルケにも冬がきた!という気がしない、テーブルの名脇役なのです。

冬の昼食に欠かせないマルケ州の手打ちパスタ「カッペレッティ」

手打ちパスタカッペレッティマンマたちの冬の手仕事は”小さな帽子”という名のカッペレッティ

イタリアはどこでもマンマの手打ちパスタが愛されていますが、その中でも中部地方は軟質小麦の栽培が盛んで、昔から卵入りの生地を丸く薄~く延ばしたスフォーリアというものを、切ったり、具を包んだりして、成形したものがとてもポピュラー。日本でも馴染みのある、タリアテッレやラザニアも、こうして薄く延ばした生地をカットして調理したものです。
この作業は伝統を重んじるマンマにとってはほぼ神聖なもの。パスタマシーンなどは使わず、板の上で麺棒を操り上手に伸ばしていきます。

麺棒で伸ばされたパスタ生地マンマは丁寧に麺棒で手打ちが鉄則

この生地にお肉の具を入れ、帽子の形に小さく小さく包んだのが、マルケ州の伝統パスタ、カッペレッテイ。
クリスマスが近くなると、友人同士で集まっておしゃべりを楽しみながらこのパスタを包むのが冬の女性の習わしで、風物詩のひとつとも言える、美味しく楽しい作業です。

友人とカッペレッティを作る林由紀子さん友人同士で集まってパスタ作りは最高に楽しい!

温かいスープに浮かぶマンマの手作りのカッペレッテイは、クリスマスを過ごす幸せな家族のシンボルなのです。

温かいスープとカッペレッティ金色に光るスープに浮かぶカッペレッテイはマルケ州のクリスマスのシンボル

おばあちゃんの作るお菓子「ボストレンゴ」

伝統菓子ボストレンゴマルケ州でも段々と消えつつある郷土菓子、ボストレンゴ

現代でこそ、安価で手に入るようになったお砂糖。
これは、一昔のイタリアではまだまだ高級品だったため、たっぷりお砂糖の入ったお菓子というのは、古いレシピの中には貴族や修道院のものを除いてはあまり見られないものでした。
このお菓子は、貧しい農家でも必ずあった、干しぶどうや干しイチジク、米びつに残ったわずかな米や、乾燥したパンなど、とにかく家の中にある諸々のもので、できるだけ美味しいお菓子を作ろうとおばあちゃんが工夫を凝らして作っていた、そんなお菓子です。

干したイチジク夏の間に作っておいた干しイチジクをたっぷり入れて

冬になるとフレッシュなフルーツが姿を消し、夏の間に作られたドライフルーツが活躍します。お菓子の甘みを増すために、糖分の多いイチジクやレーズンが重宝されていました。茹でたお米と、ドライフルーツ、牛乳でふやかしたパン粉……繋ぎに卵をいくつか割り入れて。こんなふうに、ボストレンゴというお菓子は、決まったレシピが無い状態で、手元にあるものを目分量で入れていくお菓子だったので、だからこそおばあちゃんのように長年の勘がある人が美味しく焼くことのできたものだったと言います。

生みたての卵必ずすべての材料が揃わなくても、あるもので作るのが田舎風

今ではほとんど出会うことのなくなった郷土菓子のひとつですが、私の友人の料理人たちはまだ伝統に従い冬になるとこのお菓子を焼いてお店に出して、地元の人々に喜ばれています。日本人の私にとっては、何と言うのでしょう、ドライフルーツの入った‟ういろう”のような食感で、とても気に入っているので、冬になると必ず焼くお菓子です。

こんな風に、お話をはじめるといくつも出てくる面白い冬の食べ物たち。

暖炉暖炉の前ではどんなものを食べたくなりますか?

夏に完熟フルーツを木からもぎ取る喜びや、秋のキノコや栗などの豊かさとはひと味違う、暖炉の火の温かさに包まれて地味深い美味しさを楽しむ、そんなしみじみした喜びが、冬の食にはあるような気がするのですが、皆さんはどうでしょう?

イタリアの田舎暮らしが知れる林由紀子さんの記事はこちら

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WRITER PROFILE
林由紀子
林由紀子

マルケ州、ウルビーノ近郊のカーイ(Cagli)在住。1999年渡伊、ファエンツァの国立美術陶芸学校の陶彫刻科を卒業後、現代美術アーティストBertozzi&Casoniのもとでアシスタントとして12年に渡ってコラボする。2003年にマルケ在住のイタリア人と結婚したのをきっかけに、マルケ州の郷土料理や工芸、美術文化に強く惹かれ、自らも陶芸家として活動する中、ウルビーノを中心とするマルケ北部や県境近郊の食文化、美術工芸文化を発信する(ラファエロの丘から)を立ち上げ、現地アテンドや料理教室、工芸体験などのオーガナイスや、ウルビーノを紹介する記事などを執筆。http://www.collinediraffaello.it/

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