CULTURE 03 Apr 2020

外出禁止4週目に突入のイタリア、自宅軟禁生活を日本人がフィレンツェから本音でリポート

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3月29日。携帯電話の目覚ましの音で目が覚めたところ、なぜかいつもより眠い気がしました。キッチンに行って壁掛け時計を見ると、「あれ?一時間ずれてる・・。あ、今日からサマータイムだ!」どうりで眠いわけです。しかし、今年ほどサマータイムに影響を受けない年はありません。なにしろ、外出禁止令が出ているのです。外出ができないので1時間ずれたところで、電車やバスに乗るわけでもなく、友人と待ち合わせるわけでもないので、うっかり忘れても何も不都合は起きません。

自宅から500メートルより先の様子もわからない日々、時間や曜日、季節の感覚も薄れてくる

時間の感覚だけでなく、曜日感覚も薄れてきます。金曜になると、イタリア人たちがSNS上で「やったー、ようやく金曜日だね!」などと喜びのメッセージを交わし合いますが、もちろん皮肉です。金曜日になったところで、翌日の土曜の予定も引きこもり確定なのです。こんなにも金曜にときめきを感じないのは、以前勤めていたテレビ局でシフト制で働いていた報道記者時代以来です。

街中に住んでいると時間、曜日に加えてさらには季節感も無くなってきます。窓からの景色だけでは大した変化は感じ取れません。外出禁止中にこれまで2度だけ食料品の買い出しに出かけましたが、外を歩いている人たちの格好で着るものを判断しようにも、歩行者がいないのです。適当に着て出かけたら「世の中はいつの間にこんなに暖かくなっていたんだ!」と驚きました。しかしその一週間後、トスカーナで季節外れの雪が降ったニュースを見ました。もうなにがなんだかわかりません。

誰もいないフィレンツェの街並み

ネットや友人たちの話から得る新型コロナウィルス感染拡大のニュースは、感染者数が多すぎて実感がわいてきません。なにしろ自宅から500メートルより先すら行けない生活なのです。町はゴーストタウンになり、人がいない町はSF映画のようで現実味がありません。確かに尋常ではないことはひしひしと肌で感じますが、苦しんでる人たちを目の当たりにするわけではありません。日々増え続ける感染者数をネットで眺めては「本当にイタリアでそんなことが起きているんだろうか・・」とさえ思ってしまいます。

日本からの心配の声と実際の生活にギャップを感じることも

日本の家族や友人から「イタリアはすごく大変なことになってるけど大丈夫?」「不安だろうけど気をつけて乗り越えてね」などと連絡が来ますが、実際には拍子抜けするほど穏やかな生活を送っています。隔離された生活というのは、もう3週間も経験してきましたが不便ではあるものの、ある意味においては安心感があります。それは外に出ても人がいないので、他人からウィルスをうつされることも、自分がもし感染していたとしても他人にうつす心配も少なくなったという安心感です。

今回の新型ウィルスで一番恐ろしいのは、自分が無意識のうちに細菌兵器になり得ることだと思います。自分が知らないうちに他人にウィルスを感染させ、その相手の命を奪うことにもなりかねないということ。それが一番怖いです。だから、国が全土を封鎖してくれたことで、他人と接触する機会が減り、自分が誰かに感染させてしまったらどうしようという不安が軽減されました。

マスクを着けて歩くイタリア人

先々週、知り合いにコロナウィルス陽性者が出てしまいました。フィレンツェから車で20分くらいの町に住むパオロさん。パオロさんとは一年以上会っていませんが、「防御服に身を包んだ救急隊がパオロさんを救急車で運んでいった」と知り合いから聞き、その後陽性反応が出たと耳にしました。70代くらいですがいつも若々しく、女性とのおしゃべりが大好きなパオロさんとは、共通の趣味の海外旅行話でよく盛り上がりました。そんなパオロさんも誰かからウィルスをうつされたのだと思うと、改めて他人に感染させることの恐ろしさを思い知ります。今も入院しており、無事を祈っているところですが、隔離生活を送るということは、つまりはパオロさんのような被害者を一人でも多く出さないことを意味するんだとしみじみ感じました。

それに、いっそ隔離された方がいつかは感染拡大が収まるだろうとも思えるようになりました。国中をあげて「外出禁止&必要最低限以外の経済活動停止」と、これだけやっているのだから、いつかは効果が出るでしょう。今やれることをみんなでやっているのだから。そんな気持ちで日々過ごしている人は少なくないのではないでしょうか。

スーパーへの入店前の列は1メートル間隔空けることが義務付けられているスーパーへの入店前の列は1メートル間隔空けることが義務付けられている

2011年に東日本大震災を東京で経験しましたが、あの時は毎晩のように余震で目が覚め、家にいても平和がありませんでした。それに比べたら、少なくとも余震で眠れないことはありません。イタリアでも外出禁止令の直後はパニック買いは起きましたが、その後は普通に商品が並ぶようになり、3週間経過した今もスーパーでは、パスタや粉類などが品薄になることは時々あるものの、生活に支障をきたすことはありません。

粉類やお米、パスタが時々品薄になるが、インスタントフードなどは意外に豊富粉類やお米、パスタが時々品薄になるが、インスタントフードなどは意外に豊富

事実上の経済活動停止状態、既に経済ダメージが出始めている

そうはいっても、このような状況は長引くほど当然ながら様々な痛みを伴ってきます。経済ダメージも身近で耳にするようになりました。友人は勤務先から電話があって「取引先からの依頼がほとんどキャンセルになって給料が支払えなくなったから、転職先を探してほしい」と連絡をうけました。バイトができず家賃が支払えなくなって困っているという学生のニュースも目にしました。シチリアでは「食べるためには仕方がない」と、食べ物が買えなくなった市民がスーパーで支払い拒否をしているという記事も読みました。

人がほとんどいないイタリアの街並み

私自身も経済ダメージを受けています。私は日本向けに「AmicaMako アミーカ・マコ(https://www.amicamako.com)」というイタリア製レザーバッグのオンラインショップを経営していますが、売上はガタンと落ちました。もちろん安全性を確保できているので営業を続けていますが、日本のお客様からは「今回のコロナの件で、この時期イタリアから商品を送ってもらう事に正直不安もありました。そちらで働いている方の状況や体調はいかがですか?安心して使って大丈夫でしょうか。」という内容のメールが届き、こう心配している日本のお客様は少なくないのだろうと実感しました。営業を続けられるオンラインショップですら経済損失を被っている現状、休業を余儀なくされている実店舗や飲食店、企業のダメージの大きさは計り知れません。イタリアの経済が今後ますます深刻化してくることは想像に難くありません。

シャッターが閉まった店

ただ、このような緊急事態にイタリア政府は市民を守る法案の準備をいくつも進めてもいるようです。3月31日現在、国からはフリーランスや自営業者に現金給付金として1カ月600ユーロ(約7万2000円)を支給するという内容や、事業主は2ヶ月間は従業員を解雇できず給料を支払えない2ヶ月間は国が80%を肩代わりするといった内容を発表しています。日々そういった情報は変化するので細かくチェックしていく必要がありますが、イタリアがどういった経済支援をしていくのかは、日本にとっても今後参考になるかもしれません。

隔離期間が長引けばメンタルに影響が出ることも心配の種に

もう一つ心配なのはメンタル面。私の友人のAは、近所にスーパーもない田舎で猫と一緒に暮らしていますが、車がないため食料調達も宅配便を頼むしか手段がありません。現在はテレワークのため、外出がほぼできず孤独感が募るそうです。私に連絡してきては「寂しすぎて、時々泣いてしまう」と言いますが、なにしろ出かけていくことができないので励ますことしかできません。彼女のような人も少なくないようで、ネット上では「メンタルケア」「心理カウンセリング」の広告を多く見かけるようになりました。日本のようにメンタルケアの電話相談サービスもあります。

マスクを着けて橋を渡るイタリア人

メンタル面には住環境も大きく影響します。庭付きの豪邸と牢屋内での生活を比較してもらえば想像できると思います、ずっと家にいることになるので住んでいる環境にもメンタルは左右されます。幸運にも私が住んでいるマンションの部屋は日当たりがよく天井も高くて開放感があり、窓からはフィレンツェのシンボル・ドゥオモが眺められ、かなり快適に暮らせています。周りの住民も静かでとても穏やかです。これがもし日当たりが悪く、窓からの景色は壁のみの閉塞的な家で、周りからケンカの声や大音量の音楽がかかりっぱなしだと想像したら・・やはり恐ろしいです。外出禁止が始まって早々に鬱々としてしまったでしょう。

知り合いの中には外出禁止中ゆえに、大好きな叔母さんが亡くなった際に駆けつけることができなくて、その死に目にあえなかったと嘆き悲しんでいる人もいます。

誰もいないイタリアの街並み

イタリアにおける新型ウィルスの被害は信じられないほど深刻なのは疑いようもなく、日本からはイタリアの全ての人が大変な思いをして絶望的な隔離生活を送っているように思われるのも、無理もないことのように思います。そして、実際に経済面やメンタル面で苦しんでいる人もいるでしょう。

犬を散歩する女性とイタリアの街並み

しかし、また一方で多くの人たちが悲惨な生活を送っておらず、うまく気分転換をはかりながらそれなりに楽しく過ごそうとしているのも事実です。日本人以上に閉鎖的な生活や孤立することが苦手なイタリア人でも、多くの人が隔離生活を既に3週間も無難に乗り切っています。このことは今後、在宅の期間がいつもより長くなりそうなことを不安に思っている日本人にとって、少しは安心材料になるかもしれません。

外出禁止令が出されてから、イタリアで過ごす軟禁生活もいよいよ4週目に突入。次回は、そんな閉鎖期間中の日々を周りのイタリア人たちはどのように過ごしているかについて紹介したいと思います。
※写真はすべて外出禁止中のフィレンツェの様子を撮影したものですが、最寄りのスーパーへ買い物に行く途中に撮影したもので、移動制限に反していません。

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WRITER PROFILE
小林 真子 Mako Kobayashi
小林 真子 Mako Kobayashi

フィレンツェ在住。元静岡朝日テレビ報道記者。2012年よりフィレンツェ在局FMラジオ番組レギュラー出演。イタリアの労働ビザを取得し、イタリア製アイテムのオンラインショップ「AmicaMako(アミーカ・マコ)」を経営。2013年、イタリアのテレビ局SKYのドキュメンタリー番組に出演。「週刊新潮」等でイタリア関連の記事やコラムを執筆。 AmicaMako https://www.facebook.com/amicamako/ https://www.blog.amicamako.com/ https://www.instagram.com/amicamako/

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