COLUMN
CULTURE 02 Aug 2019

イタリアの野草にまつわる風習を伝承する野草の巫女、マリアソニア・バルドーニさんを訪ねて

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イタリア生活20年、最も魅力を感じる野草文化

皆さん、こんにちは。
突然ですが、今年の夏は著者がイタリアに渡り20年目を迎えます!
ほぼ人生の半分をイタリアで過ごしてきて、沢山のことを学び、アートの世界で仕事をし、食文化の魅力に目覚め、こうして稚拙ながら皆さんにイタリアのコアな魅力を伝える記事なども書かせていただいている訳です。が、私なりにじっと20年にわたってこの国を見つめてきて、探し出した沢山の素敵なこと。そのひとつは、やはり芸術文化と食文化との繋がりにあります。

芸術の中の食、食の中の芸術……それぞれのテーマはイタリアの魅力を現す最良のキーワードであり、それらは郷土文化や工芸文化にも繋がり、文化や歴史そのものが塊となっていることを実感できる国イタリア。
そんな文化の中でもここ数年強い魅力を感じているのが、イタリアの野草文化にあります。

イタリアの山ではたくさんの野草が採れる

春の醍醐味、野草摘み。籠が野の恵みでいっぱいになる
これはオシャレなハーバルライフを送りましょう、といった近代ライフスタイル提案の類ではなく、長い歴史の中で生活に密接に関わってきた生活の知恵の一部であり、神話や信仰にも関わってくる、ぐっと掘り下げてみるととても価値のある興味深い文化なのです。

野草食から見たイタリアとは?

著者がイタリアで田舎暮らしを始めて驚いたことのひとつが、田舎のおばあちゃんたちが四季を通して野に出て摘み菜をしていること。特に早春の野には、やわらかい若葉があちらこちらに生え、いろいろな種類の野草が郷土料理の中に生きています。

女性たちは野草を採り、それを料理に生かす

今でも農家の庭先では、摘んだ野草を家族で処理する姿がちらほらと見られる
日本と同じく、野草を食べるという習慣は、冬野菜が終わり、夏野菜が出始める前の春先の季節、採れる野菜が少ない時期を健康に乗り越えるためにあります。春の訪れとともに生えてくる生命力いっぱいの野草は栄養補給となるのです。それに加えて、大家族の多かった昔の農家では、家族をおなかいっぱいにするべく、お母さんやおばあちゃんはせっせと春になると野に摘み菜に出ていたのです。そんな風習は現代の飽食化された食文化の中では一度は価値が薄れてしまいました。が、嬉しいことに近年は少しずつその良さは見直されてきています。

野草を練りこんだパスタ、タリアテッレ

伝統的な野草料理である、ネトルを練り込んだタリアテッレ。野草の香りを楽しめる一品
 
著者もそんなイタリアの摘み菜人の一人です。親戚や近所のおばあちゃんから植物学者、食文化の歴史家など、いろいろな方からおいしい野草、調理法、歴史、正しい摘み方などを教わり、もう15年ほどこの世界に魅了され続けています。

私の住むマルケ州には、そんな野草文化を色々な視点から伝承している女性がいます。
彼女の名前は、マリアソニア・バルドー二。彼女との出会いから、どんな活動とワークショップを開催されているのか、その様子をご紹介しましょう。

シッビリーニ山の麓の自然に生きる野草の巫女

長い間野草を通じて様々な文化を伝承するマリアソニア
マルケ州南部にそびえるシッビリー二山。この山の麓にある小さな村アマンドラに“野草の家”という野草文化のネットワークを作り、イタリア全国で活動しているのが、マリアソニア・バルドー二。彼女の活動は食用にできる野草を見分けるためのワークショップのみならず、薬草やハーブにまつわる古い風習や伝承などを絡めた内容の、とても興味深いもの。食用、薬用に加え、魔除けなど実用面だけではなく歴史の中での野草、ハーブ全般の利用法をユニークなワークショップで紹介しているのです。

食用野草を参加者と一緒に野に出て摘み、それで料理をしたり、ハーブや薬草に縁のある風習や儀式を紹介したり、ワークショップが開かれる土地の聖人や聖女に縁のある植物を紹介したり……それはそれはバラエティーに溢れているのです。植物やそれにまつわる風習、儀式などに精通しているため、多くの人に“野草の巫女”といつしか呼ばれるようになったマリアソニア。

彼女の活動で素晴らしいのは、サスティナブルなエコノミーを野草を通して生み出すこと。各地にワークショップで訪問の際、その土地で採れる野草をどのように地域経済に活かせばいいかなどを地元の若い人たちにアドバイスし、地元のレストランのメニュー開発に協力したり農業と掛け合わせて紹介することを促す活動も。
ワークショップのみだけではなく、大学や病院などでの講演もされているそうです。

筆者も体験してきました!

それでは 著者が今まで参加してきた数多くのワークショップの様子をご紹介致します!

野草を摘む林由紀子とマリアソニア

著者がワークショップに参加した時の様子
まずは正しく植物を見分けるためのワークショップ。これは四季を通して行われます。それはある植物を見分けられるようになるにはその植物の四季それぞれの姿を知るのが好ましい、という理由から。そうすることで、ひとつの植物がどのような場所を好んで生えるのか、どんな種をつけるのか、などを実際に観察しながら知ることができるのです。

野草は標本にして学術名や用途を知る

このように採集した植物の学名、用途などを書いてゆく

採集された植物は標本のように参加者全員で紙に張り、学名、用途などをメモしていきます。これだけでもドライにすればインテリアになりそうなくらい素敵。全員で協力しながら進める作業も楽しいものです。

さて変わってこちらのワークショップは古代と植物のかかわりのワークショップのお話。イタリアでも最も古い民族のひとつといわれているウンブロ族が紀元前300年前に作ったと言われるグッビオの青銅版。

野草の活用方法を伝える紀元前300年前の青銅版

ウンブリア州グッビオの町に伝わる紀元前300年の青銅板
このウンブロ語の文字に登場する植物のお話や現代のそれらの植物の用途など……いろいろな時代のお話を絡めながら教えてくれるのが本当に楽しいのです。

ワークショップではマリアソニアが野草にまつわる様々なことを教えてくれる

ワークショップでは参加者が真剣に話に耳を傾ける

他にも彼女の活動は沢山の広がりを見せていますが、それはまた別の機会に。
既に日本の某雑誌でもシビッリーニ山の野草の巫女として紹介された事のあるマリアソニア。
忘れ去られつつある風習や伝承は、一度消えてしまうとなかなか見つけてもらえない文化の埋蔵品のようなもの。少しずつでもこのような活動が広がりを見せればいいな、と著者は願ってやみません。

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WRITER PROFILE
林由紀子
林由紀子

マルケ州、ウルビーノ近郊のカーイ(Cagli)在住。1999年渡伊、ファエンツァの国立美術陶芸学校の陶彫刻科を卒業後、現代美術アーティストBertozzi&Casoniのもとでアシスタントとして12年に渡ってコラボする。2003年にマルケ在住のイタリア人と結婚したのをきっかけに、マルケ州の郷土料理や工芸、美術文化に強く惹かれ、自らも陶芸家として活動する中、ウルビーノを中心とするマルケ北部や県境近郊の食文化、美術工芸文化を発信する(ラファエロの丘から)を立ち上げ、現地アテンドや料理教室、工芸体験などのオーガナイスや、ウルビーノを紹介する記事などを執筆。http://www.collinediraffaello.it/

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