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CULTURE 23 Jan 2019

サンタ?ハロウィーン?魔女の宅急便? イタリアの新年は魔女が集まる「べファーナ祭り」から

林由紀子
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みなさんこんにちは。
まだ1月ですがすっかりお正月気分も抜け、いつも通りの日常を過ごしています。
イタリアでは、新年をのんびりと過ごす人が多いのが特徴です。
日本のお正月のように、初詣に行ったり、おせち料理をいただくという年始ならではのメリハリをあまり感じずに過ぎてしまうのがちょっと残念。というのがイタリア在住日本人の正直な気持ちです。

とはいえ、イタリアには全く新年のイベントがない、というわけではありません。
私がお正月のこの時期に唯一楽しみにしているのが、いわゆるエピファニー、イタリア語で「べファーナ」と呼ばれるお祭りです。
今日は少しだけ時間を戻して、イタリア・マルケ州北部の小さな街「ウルバーニア」での、素敵な「ベファーナのお祭り」のことをお伝えしたいと思います。

イタリアの新年のお祭り「ベファーナ」は魔女が集まる怖〜い童話の雰囲気?

イタリアの新年のお祭り「ベファーナ」の起源

その源流は紀元前三世紀とも四世紀とも言われており、もともとは「豊作に感謝し来たる芽吹きの春を祀る」という趣向の祭りで、ミトラ神や、ケルト人などの信仰にも繋がりがあると言われているようです。
キリスト誕生後は、「クリスマスの12日後、東方三博士(イエスの誕生を知らせた流れ星を目印に祝いの言葉を伝えるためにやってきた人たち)に関わりのあった老女」のエピソードがもととなり、キリスト教に纏わる公現祭として親しまれています。

エピファニーの夜(5日と6日の間の夜)に「べファーナ」と呼ばれる愛嬌のある魔女がほうきに乗って子供のもとを訪れます。
そして、1年間いい子にしていた子にはお菓子を、悪い子だった子には木炭やニンニクを靴下に入れて暖炉にぶら下げておきます。
魔女ベファーナたちは、まるでクリスマスのサンタクロースのようですね。
そう、魔女が集まる「ベファーナのお祭り」とは、クリスマスと関わりの深いお祭りとして定着しているのです。


見た目はちょっと怖い、ベファーナの魔女の人形

べファーナ祭りで知られる街、イタリアマルケ州北部「Urbania(ウルバーニア)」

私が毎年訪れるのは、マルケ州北部の小さな街Urbania(ウルバーニア)。
この街は古くから「Castel Durante(カステル・デュランテ)」と呼ばれ、この地域の貴族のためのマヨリカ焼きを焼いていた伝統ある焼き物の街でした。
世界遺産でもあるイタリア・ウルビーノの街から23km離れた丘陵地帯にあるウルバーニア。
ここで開かれるべファーナ祭りは国に認定されているだけありなかなかユニークな内容で子供達が楽しめるプログラムが盛り沢山です。

何より魅力があるのは、街中の女性が魔女に仮装して、3日間のお祭りの間じゅう楽しそうに練り歩く様子。
小さな女の子から本当の老女まで、めいめいに工夫を凝らした衣装で思い切り楽しむ様は、「ああ本当にイタリア人らしいな」と思う瞬間です。

一般の訪問者でも、魔女の衣装を着たい人は自治体が無料で貸してくれるという嬉しいサービスもあり…!
日本で人気のスタジオジブリの映画「魔女の宅急便」の扮装で紛れ込んでも馴染みそうです。

3日間のお祭りの間中、街にはいかにもべファーナらしく編み物を黙々とするおばあちゃん達の姿が見られます。


このお祭りが始まった20年近く前から編み始められた長〜いマフラーをせっせと編み進めるおばあさん。

夕方になるとパレードが始まり、来訪者でごった返す街中を大勢のべファーナが練り歩き最高の盛り上がりを見せます。

さて余談ですが、私は今年地元のアソシエーションの仲間と郷土料理をプロモーションするために参加いたしました。
1年前から食や食の歴史が大好きな仲間と、「新しい視点で郷土料理やその歴史を継承していこう」と立ち上げた食文化のアソシエーションですが、今回自治体より「食文化に関するイベントを是非やってほしい」とお声をいただき、魔女に扮して伝統的なパスタ作りのワークショップをする運びとなったのです。
さすが食いしんぼうの国イタリア、食に関するイベントに関しては本当に理解があるのでさすがです!

アソシエーションの仲間と魔女の衣装を纏い、皆ありったけの”それらしい”布切れやニットでベファーナの魔女に変身いたしました。
気分はまさに魔女の宅急便です。

昔修道女が作っていた”Lumachelle delle Monache(ルマケッレ デッレ モナケ)”という名のパスタを作るワークショップを開催しました


直訳すると”修道女の巻き貝パスタ”といった所でしょうか。
元々はルネッサンス期に遡る長〜い歴史のあるパスタで、当時ものすごく高価だったスパイスがふんだんに生地の中に練り込まれているため、貴族や伯爵が修道女に作らせていたと言われており、このパスタが現在でも食べられているのはイタリアでもここウルバーニア近郊のみなんです。
織り機の櫛と呼ばれている道具で付けられた細かい縞模様が小さな巻き貝に見えることからこの名が付いた事や、ものすごく手の込んだパスタなのでクリスマスやエピファニーなどのお祭りの機会にのみ食されていた、というのは簡単に想像が出来、まさにこの季節に紹介するのにぴったりのパスタです。


パスタ作りワークショップの様子。忘れ去られてしまったレシピを再現し、子供達に知ってもらうのも大切なアソシエーションの活動の1つ。

イタリアのお正月と冬の終わりを思わせる伝統的なお祭り

キーンと空気の凍るこのエピファニーの季節。このべファーナのお祭りが終わればバカンス気分が終わり、イタリア人は仕事やら学校やらの日常生活に戻って行きます。
このベファーナのお祭りはイタリア人にとっては公現祭であり、冬休みの終わりを告げるイベントなのです。
いくら時代が変わっても、冬の寒さを吹き飛ばしながら芽生えの春を待ち遠しく思う気持ちを祭りに込めるのは、昔も今もそんなに変わらないのかも知れません。

Festa nazionale della befana (フェスタ ナツイオナーレ デッラ べファーナ )に関するHPはこちら

WRITER PROFILE
林由紀子
林由紀子

マルケ州、ウルビーノ近郊のカーイ(Cagli)在住。1999年渡伊、ファエンツァの国立美術陶芸学校の陶彫刻科を卒業後、現代美術アーティストBertozzi&Casoniのもとでアシスタントとして12年に渡ってコラボする。2003年にマルケ在住のイタリア人と結婚したのをきっかけに、マルケ州の郷土料理や工芸、美術文化に強く惹かれ、自らも陶芸家として活動する中、ウルビーノを中心とするマルケ北部や県境近郊の食文化、美術工芸文化を発信する(ラファエロの丘から)を立ち上げ、現地アテンドや料理教室、工芸体験などのオーガナイスや、ウルビーノを紹介する記事などを執筆。http://www.collinediraffaello.it/

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