CULTURE 08 May 2020

「街に人が戻ってきた!」イタリアで一番早いロックダウン緩和のトスカーナ、雰囲気が一変したフィレンツェから現地リポート

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祝日だった5月1日(金)、トスカーナ州はイタリアでどこよりも早くロックダウンが緩和され、外出規制が大幅に緩められた第2段階に入りました。移動できる範囲が一気に広がった初日、トスカーナ州都のフィレンツェの中心地には市民たちが戻り、街の雰囲気は一変。フィレンツェの街の様子を規制緩和の内容とともに現地からお伝えします。
※ロックダウン第1段階のフィレンツェの様子と比較すると違いがよくわかります。「誰もいなくなったフィレンツェの街から現状リポート(2020年3月19日現在)」もあわせてご覧ください。

【誰もいなくなったフィレンツェの街から現状リポート(2020年3月19日現在)】を読む

5月2日時点のイタリア当局の発表では、新型ウイルスの死者数は約2万8700人でヨーロッパ最多、これまでに確認された感染者は約20万9千人で世界で3番目に多く被害が深刻なイタリア。ロックダウンは3月10日から始まり、ヨーロッパで最も長い8週間の厳しい外出禁止が続いてきました。5月2日時点のイタリア全土の感染者数は約10万700人で、日本の8.5倍ほどですが、これからウィルスとの共存がスタートします。

人が戻ってきたベッキオ宮殿の様子

5月4日のイタリア全土のロックダウン緩和に先駆け、トスカーナ州では1日から第2段階へ

イタリア全土におけるロックダウン緩和は5月4日(月)からですが、トスカーナ州はイタリアで唯一3日早い1日から第2段階に入りました。国全体の大まかなロックダウン解除のガイドラインは国が定めますが、それぞれの州内での細かい規制は各州知事の判断に委ねられます。
トスカーナの外出規制緩和では、自宅周辺のみの移動制限が撤廃され、住んでいる区域内において公園利用や屋外での個人スポーツなどが再び可能となりました。

外出制限が緩和されたフィレンツェ

私のイタリア人の知人の中には、4月上旬に自宅から1キロ離れたところでジョギングしていた際に私服警察から職務質問を受け、280ユーロ(約3万3千円)の罰金を受けた人がいます。周りに誰もいない林道でのジョギングでしたが、自宅から離れすぎているという理由で取締の対象となり、外出禁止の厳しさを物語っていました。ですが、1日からは区域内であればどこでも散歩は可能、自宅から10キロ離れた場所でジョギングをしても問題ありません

ジョギング中に水を飲むイタリア人

さらにイタリア全土で規制緩和となる4日からは住んでいる州内であれば、自家用車や交通機関を利用して出かけていった先で、個人スポーツをすることも可能になります。食品や生活必需品の買い物も、自宅から最寄りのスーパーや薬局と定められていましたが、1日からは好きな店舗で買い物できます。
上記についてはいずれも他人が近くにいる場合や屋内では引き続きマスク着用は義務、同居人以外の他人とは1メートルの距離(スポーツの場合は2メートルの距離)を空けることが条件で、集会などは禁じられています。

マスク姿のイタリア人たちが公園や広場に戻り、活気づいたフィレンツェ

1日、初日の朝。家にいてもロックダウン解除の変化はすぐに感じられました。私はフィレンツェの中心地(ユネスコ世界遺産区域内)に住んでいますが、外出禁止中は人通りが途絶え静まりかえっていました。それが、初日の朝には通りからイタリア人たちがおしゃべりする声が頻繁に聞こえるようになり、窓の外を見ると多くの人たちが歩いています。これまでは外出規制のために一人で歩いている人がほとんどでしたが、家族やカップルと見られる複数の人たちが一緒に歩いており、自転車利用者が大幅に増えているのも大きな変化でした。
午後になってから出かけましたが、通りに出た瞬間から世界は一変していました。人がこれまでとは比較にならないほど増えていることはもちろん、なによりも雰囲気が完全に違うものになっていました。それまでは常に張り詰めたような緊張感が漂っていて、正当な理由の外出でさえもパトロール中の警察官や警察車両が通ると妙に緊張し、いつもどことなく不安な気持ちで歩いていました。一人でただ歩いているだけのごく普通のイタリア人を警察官が呼び止めて職務質問している場面に遭遇したこともあります。

パトロールする警察官

そんな緊張感はすっかり消え去り、警察車両も増えた人通りの中をただ通り過ぎていくだけでした。どこかのアパートで演奏されているピアノの音色や、車やバイクの音、犬や鳥の鳴き声ぐらいしか耳に入ってこなかった街に、多くの人たちが談笑する声や遊び回っている子どもたちの笑い声が戻っていました。私は厳しかった外出禁止の最後の日となる前日の4月30日(木)にも街の中を歩きましたが、たった一日でこうも世界は変わるものなのか、と心底驚きました。

ウイルスとの共存へ。新型コロナウイルス影響前と比べて変わったイタリアの生活スタイル

人が街に戻ってはきたものの、新型コロナウイルス影響前に比べて様々な変化が見られました。このSHOP ITALIAに先月掲載された「たった3ヶ月、新型コロナの影響でこれほどまでに変わったイタリアのマスク習慣」でも紹介したように、ほぼ全員がマスク姿になっていました。手術に使うようなマスクやカラフルな模様の手作りマスク、役所から無料配布された紙製マスクなど。これだけ多くの人が一斉にマスクをつけている様子はやはりとても異様で、改めて生活スタイルが一変したことを実感しました。

マスクをして街中を歩くイタリア人

それから、もうひとつ大きく変わったことは他人との距離感です。ジュゼッペ・コンテ首相も“Inizia la Fase Due, se ami l’Italia mantieni le distanze”=「第2段階のスタート、イタリアを愛するなら距離を取ろう」と国民に呼びかけていますが、イタリア人同士の他人との距離感が以前よりも大きくなっていました。そもそも、イタリア人はキス&ハグが挨拶の基本なので、コロナ以前はどこでも道端で抱き合って挨拶している人だらけでした。それがコロナ後は公園や路上で知り合いに会って立ち話をする際にも、義務付けられている1メートル以上のソーシャルディスタンスを保つようになりました。

距離を保って話すイタリア人

今回の規制では、同居人については屋外でも距離を空ける必要はないため並んで歩いている人もいますが、広場で7人の女性が、それぞれ1メートルずつ距離を空けて円を作って立ち話をしていたのはコロナ前には考えられないような光景でした。

ソーシャルディスタンスを保って話すイタリア人

ジェラテリアの外観も様変わり、店構えはまるでチケット売り場に

4月30日まで宅配サービスのみ営業可能だったバールやレストランでは、1日から店頭持ち帰りサービスの営業ができるようになり、ジェラテリアでも店頭受け渡しが再開されました。1日は汗ばむ陽気だったため、早速ジェラテリアの前に列ができていましたが、最寄りのジェラテリアの店構えはチケット売り場のように変化していました。他人との距離1メートルを確保できない店内へは入れないようになっており、店頭にはメニューの看板が掲げられ、店員とお客の間には透明ガラスの仕切りと義務化された殺菌ジェルが設置。店員もマスクとゴム手袋をつけており、ぱっと見た感じでは、ジェラテリアに見えないほどでした。

営業が再開されたジェラテリアの様子

この他、ピザ屋でも似たような光景を目にしましたが、箱のケースに入った持ち帰りピザを手にしながら歩いているイタリア人を見かけるのは実に2ヶ月ぶりでした。
レストランやバールなどでの店内飲食可能の営業許可については、現時点では6月以降が予定されています。

イタリア人たちのキス&ハグの”濃厚な”挨拶とランチ会はまだまだお預け

今回の規制でもうひとつ大きく変わった点は、トスカーナでは1日から住居区域内にて、イタリア全土では州内にて親族への訪問が可能になったことです。いずれもマスク着用の義務と他人との距離を1メートル確保することが条件で、集会や会食などは引き続き禁止されます。
フィレンツェ市民の友人は、1日の朝からさっそく離れて暮らしている両親にマスク姿で会いに行き、お互い1メートルの距離を空けての再会を果たしました。イタリア人の家族の絆はヨーロッパで最も強く、久しぶりの再会は感動もひとしお。ですが、イタリア人特有のキス&ハグの濃厚挨拶はまだ許可されていません。友人の母は久しぶりの息子との再会には喜んだものの「ハグはできないの・・?」と嘆いたそうです。それでも、会話に花を咲かせてすっかり機嫌を取り戻した母親。ところが、ついうっかり息子に「もちろんランチも食べていくでしょ?」という質問をしてしまい、息子はNOという返答しかできないため、二人揃ってしょげてしまったそうです。再び以前のようなハグ&キスの挨拶を交わし、盛大な日曜のランチ会を開くまでの道のりはまだまだ長そうです。

第2段階を迎えたフィレンツェ市民の反応や感想は?危険性が少し高まったと実感する体験も

ロックダウン緩和によって一気に街に人が増えたフィレンツェ。そんな光景を目にしたフィレンツェ市民の反応や感想は二分化しています。例えば、人が増えた広場の写真を見た場合、同じ写真に対しても「この程度の人出なら合格じゃないかな。マスクはきちんと着用する必要があるけどね。それにしてもやっと規制緩和、嬉しいなあ!」という人がいれば、「こんなにも人で溢れかえっているなんてとんでもない!人が多すぎて危険過ぎる。以前のように規制を強める日々に戻るべきだ」という人も。

人が戻ってきた街並みの様子

市民が街に戻るにつれ、路上生活者も見かけるようになりました。イタリアの路上生活者は歩行者にお金をねだることがありますが、3日にはマスクをつけていない路上生活者が「私のことが怖いか?私はマスクを買うお金すらないんだ。だからお金を渡せ!」とマスクをしていない顔を歩行者にぐっと近づけ半ば脅すようにお金をねだる光景を目にし、第2段階に入って新たな問題も発生していることを実感しました。

ここまで主に「移動に関する規制緩和」について書きましたが、今回のロックダウン緩和では、この他にもいくつも大きな変更点があります。おおまかに説明すると、ファッション関連や自動車、鉱業、家具製造など様々な製造業や建設業、不動産業など多くの経済活動が再開されます。自動車販売やタイヤ交換や保守点検などの自動車サービスも再開になり、市民は車を再び購入できるようになります。さらに15人以下に限ってお葬式が可能になり、お墓参りも認められるようになります。

人が戻ってきたフィレンツェの街中

逆に、州をまたがる移動については引き続き厳しく制限され、やむを得ない理由がある場合に限って認められます。美術館や図書館の再開や小売店での販売再開は5月18日からの予定で、美容院の再開については6月以降、学校は9月まで休校となることが現時点では予定されています。
ただ、規制が緩和されたとはいえ公園を集団で利用するなど規制に反した場合、市長はすぐにそれらの場所を封鎖する権限も持っており、引き続きウイルス感染拡大の恐れもあることから、イタリア国民はこの緩和に浮かれることなく、コンテ首相が呼びかける「イタリアを愛するなら距離を取ろう」を念頭に置いた行動が今後も求められることになります。

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WRITER PROFILE
小林 真子 Mako Kobayashi
小林 真子 Mako Kobayashi

フィレンツェ在住。元静岡朝日テレビ報道記者。2012年よりフィレンツェ在局FMラジオ番組レギュラー出演。イタリアの労働ビザを取得し、イタリア製アイテムのオンラインショップ「AmicaMako(アミーカ・マコ)」を経営。2013年、イタリアのテレビ局SKYのドキュメンタリー番組に出演。「週刊新潮」「宅ふぁいる便」等でイタリア関連の記事やコラムを執筆。 AmicaMako https://www.facebook.com/amicamako/ https://www.blog.amicamako.com/ https://www.instagram.com/amicamako/

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