スペースはみんなの力でステージへと作り上げられた
COLUMN
CULTURE 19 Jun 2020

【連載】大塚ヒロタとイタリアと、コメディア・デラルテ「ゼロから作り上げた初の一人芝居奮闘記」後編

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イタリアから帰国後初めてのコメディア・デラルテショーのチラシイタリアから帰国後初めてのコメディア・デラルテショーのチラシ

それに気づいた時、思わず心の声を喉元で止めることができずに漏れた。

「やばっ・・・」

初めてのコメディア・デラルテ一人芝居を準備していた私は、本番直前に重大なことに気づいた。「照明と音響は誰がやるんだ?」今から考えればとんでもなくずさんな運営だが、コメディア・デラルテの特性上、極端に言えば道端でもできるものだったので、その程度にしか考えていなかったのだ。(言い訳を言うなら、イタリアでやっている時は何事もこんな感じだった。笑)そしてその後、それだけでなく当日客席や舞台を作るのを手伝ってくれる人、受付をしてくれる人等もいないことにも気づいた。もちろんプロを雇うお金はなかった。

その時、私の脳裏にはある男の顔が浮かんだ。演劇学校で同期だった役者の山里健一朗だ。全く演劇経験も芝居の知識もない状態で演劇学校に入り、さらにひたすらに生意気だったので完全に浮いてしまった当時の私をなぜか受け入れてくれた彼は、正面から見ると普通なのに、横から見ると頭がやたらと平らだったので「平平平平(ひらだいらへいべい)」というあだ名を持つナイスな奴だった。私は直ぐに彼に電話して「今週の金土日芝居やるんだけど手伝って」と誘った。この誘い方で照明と音響をお願いしたのだから、当日彼は相当パニックだったと思う。通常演劇では照明と音響はもちろん別々の部署だし、各部署にスタッフが数名いるのが普通だ。それを一人で、さらに初めて合わせるのが本番直前という状況なのだから、かわいそうな平平平平である。照明の卓と音響コンポを前に「手の数が足りない」と言っていたのを思い出す。

立て込み前立て込み前

この公演は昼の回だけは二本立てで、敬愛する演劇チーム渋谷ハチ公前(渋ハチ)の植木祥平くんと作演出に高橋努さんを迎えた、むしろそっちの方が豪華な布陣の短編二人芝居も公演に盛り込んであった。これでチケット一人芝居1500円、二本立て2000円なのだから破格中の破格だと思う。その関係もあり、公演前日の仕込みには石田将士くん(通称MC)と大対源くん、冨樫舞さん等の渋ハチの劇団員も手伝いに来てくれたのだが、私の為に無料で揃えてくれた沢山の舞台の仕込み資材を手に現れた彼らは、建て込みのメンバーを見てあっけにとられたと思う。
 
総勢2名。

私と平平平平である。手伝いに来てくれたのが演者の植木君を合わせた倍の4人・・・朝一で当日の動きなどを確認にきたMCは「大塚さん、舞台監督はどなたですか?」と聞いてきた。僕は「え~っと、それいる?」と答えると、彼は真剣な眼差しで「これ、このままじゃ公演できませんよ。僕で良かったら舞台監督やらせてください。」とすぐさま言ってくれた。そこから七面六臂の活躍で、彼らはあっという間にただのスペースを舞台と客席にしてしまった。その後数年に渡り、我々の公演だけ特別に役者のMCが舞台監督をしてくれるようになっていった始まりは、こんな男気ある行動からだった。さらに富樫さんもそこから全4回公演の受付を全て担当してくれて、売上やお客様対応も全てやってくれた。そういえば、初日を見に来たはずのかあさんも当たり前のような顔でそのまま受付を手伝ってくれた。
その後も僕は演劇チーム渋谷ハチ公前に何度もお世話になるのだが、私の劇団運営のノウハウはすべて彼らから学んだと言っても過言ではない。本当にいくら感謝しても仕切れない思いだ。

スペースはみんなの力でステージへと作り上げられたスペースはみんなの力でステージへと作り上げられた

肝心の初めてのコメディア・デラルテの一人芝居の内容だが、代表的な4つのキャラクターの特性を生かした、ショートストーリーをつなげたオムニバス形式にした。実は臆病な自称大将軍カピターノ、大金持ちのどケチエロジジイのパンタローネ、恋に恋する16歳のナルシスト王子ヴァレンティーノ。これらをつなぐのが、問題だらけの召使い・アルレッキーノ。舞台上にマスクや小道具を並べて、キャラクターの転換も見せる師匠の一人芝居(ガブリエリアーナ)を意識した構成。ストーリーはないが続けて観られるように工夫した。もちろん舞台には私しかいないので、すべてのキャラクターが舞台にお客様をあげるか、私が客席に降りていく形でお客様と絡むようにした。全身全霊の喜劇。汗だくの1時間でまだまだ稚拙ながらもお客様と沢山の笑いを共有できた。そして、何より舞台上にいる私が誰よりも楽しんでいた。

おそらくこの感覚が今の今まで続いているから僕はコメディア・デラルテを続けているのだと思う。これをやっている時の「自分が無敵になった」ような感覚。それが映像の現場やストレートプレイでもいつでも持てたら僕も役者として違うステージに行けるんだろうなと常々感じている。

この日がなかったら今の僕はありません。
改めて、石田将士くん、大対源くん、冨樫舞さん、植木祥平くん、高橋努さん、かあさん、平平平平くん、いや山里健一朗くん(順不同)ありがとうございました。

終演後、みんなでパチリ。みんなごめん!楽しかったのだ♪終演後、みんなでパチリ。みんなごめん!楽しかったのだ♪

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大塚ヒロタ

WRITER PROFILE
大塚ヒロタ
大塚ヒロタ

俳優、テアトロ コメディア・デラルテ主宰。NY で演劇を学びコメディア・デラルテと出会いイタリアに渡る。帰国後、映画「64 -ロクヨン-」の宇津木役、「図書館戦争」シリーズの野村役で注目を集める。 映画「キングダム」「唐人街探索」「楽園」、ドラマ「フルーツ宅配便」「ボイス110緊急指令室」、CM「ほっともっと」「中部電力」「よなよなエール」 ■最新の出演作は Twitter@hirotaotsukaでも随時更新中

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