COLUMN
CULTURE 20 Dec 2019

【新連載】大塚ヒロタとイタリアと、コメディア・デラルテ第一回「私が即興演劇をはじめた理由」

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俳優であり、日本におけるコメディア・デラルテの第一人者でもある大塚ヒロタ自身が書き記す新連載が始まります。まだ認知度の低いコメディア・デラルテとは? なぜ大塚ヒロタはこの即興演劇に魅了されたのか?

コメディア・デラルテの稽古でカピターノを演じる大塚ヒロタコメディア・デラルテの稽古でカピターノを演じるヒロタ

アメリカで出会ったコメディア・デラルテ

衝撃だった。

2007年、場所はニューヨークの小さな劇場、言語はイタリア語、そこで日本で生まれ育った私はイタリアの仮面喜劇を観て大爆笑していた。さらに、そうしていたのは私だけではなかった。その空間を共有していた人は皆、黒人や白人、小さな子供やお年寄りなど皆声をあげて笑っていた。いわゆる爆笑の渦。それがコメディア・デラルテとの出会いだった。
コメディア・デラルテと聞いてピンと来る人が何人いるだろうか? 当時ニューヨークに演劇留学中だった私も授業でその名前を聞いたことがある程度だった。そのマエストロが近くの劇場で一人芝居をやるとき聞き「折角だから観てみるか」程度の気持ちで私は劇場に足を運んだ。
そこで出会ったその光景。言語や文化、人種や年齢を飛び越えた問答無用のコメディ。アメリカでくすぶっていた私の視界は一気に晴れた。「これができれば世界中の人を笑わせられるんだ! 私がやりたかったのはこれなんだ!」と。

アメリカで俳優を目指した若気の至り

2002年に日本の大学と夜間の演劇学校を同時に卒業した私は、「アメリカで活躍すれば、何者かになれるのではないか?」という若気の至りとしか言い様のない動機でアメリカに渡った。
アメリカで英語で舞台に立ったり、映画に出たりできるまでは、どんなに辛くても3年は頑張ろうと決めて渡ったハズだったが、刺激に溢れた街NYで気づけば5年半近くの時間を過ごしていた。

ニューヨークで俳優活動をしていた大塚ヒロタニューヨークでの俳優活動。ショートフィルムに出演した際の撮影風景。

20代の私が過ごす場所として単純に楽しかったのだ。その間ある程度英語も話せるようになり、舞台にも立つことができた。しかし、その生活の中心はウェイターのアルバイトとサッカーの日々。肝心の俳優活動といえば、いわゆる小劇場や学生映画、そしてエキストラのようなものがポツポツとスケジュールに入っているだけだった。

英語で芝居ができれば、何か違う世界が見えると思っていた私だったが、「言語を使っていたら結局は同じなんだ」と落胆していた。ましてや母国語でない言葉で芝居をする難しさ、アクセントの問題、絶対的な役の少なさを痛感させられてもいた。

そんな時に出会ったのがイタリア語で上演されていたのに、舞台上で起きていたことすべてを把握し、なおかつ大爆笑したこのステージだった。

イタリアのコメディア・デラルテ学校の仲間と大塚ヒロタイタリアのコメディア・デラルテの学校の仲間と。

終演直後、私は劇場に爆笑の渦を巻き起こした俳優に思い切って声をかけてみた。
それが後に師匠になるアントニオ・ファーヴァとの出会いだった。私は全米各地で行う彼の公演や大学での講義について回った。すると彼から思いがけない誘いがきた。「そんなに好きなら、イタリアの私の学校で助手をしながら学ばないか?」と。アメリカンドリームを完全に掴み損ねていた私は直ぐにイタリア行きを決意した。

イタリアのコメディア・デラルテ学校の練習風景コメディアの学校の稽古風景。

イタリアでの1年間の修業を経た先に

イタリアで一年間みっちりコメディア・デラルテを学び、2009年に帰国した。

イタリアのコメディア・デラルテ学校の練習風景イタリアでの稽古風景。

私は以前からご縁のあった大杉漣さんの事務所にお世話になる形で日本での芸能活動を開始した。映画、TV、CMと映像作品にも活動の場を広げる中で、自分のルーツであるコメディア・デラルテの一人芝居を始めた。

今思えば本当に拙いその第一回公演を見てくれた大杉さんは「面白かったよ、いろいろ言いたいことはあるけど、続けるんだろ? 続けないとダメだぞ」と言ってくださった。

コメディア・デラルテを演じる大塚ヒロタ日本での公演中のワンシーン。photo/Nobuyuki Aoki

その言葉を胸に毎年一本の新作一人芝居を生み出してきた。すると次第に仲間が増え、2019年の10月にはジャズバンドの生演奏とコメディア・デラルテの融合した公演を打つことができた。あの時NYの劇場の客席から体感した大爆笑の渦を、今度は西日暮里の舞台の上から体験した。

お客様だけでなく舞台上の演者、ミュージシャンも皆笑顔だった。大好評を博したその公演の再演が12月28、29日に決定した。是非劇場に問答無用のコメディを是非一度体感しに来ていただきたい。

コメディア・デラルテを演じる大塚ヒロタ日本でコメディア・デラルテを上演した際のワンシーン。photo/Nobuyuki Aoki

コメディア・デラルテは馴染みがなくても、なぜか観ればいつの間にかなんだか懐かしい様な、楽しい気持ちになっている不思議な演劇だ。そこには500年の間、人間が笑う仕組みを観察し続けた知恵と技術がある。

次回からはそんなコメディア・デラルテやイタリアでの日々について、そして少しばかり私「大塚ヒロタ」について書いていきたいと思う。

第二回「世界最古の職業演劇はどのようにして誕生したのか?」を読む

大塚ヒロタのテアトロ コメディア・デラルテのポスター

大塚ヒロタのテアトロ コメディア・デラルテ
「“UNIQUE”シリーズ ―1+1+1+1=YOU―」 再演

年末の東京でイタリアの伝統的な演劇コメディア・デラルテが観られます。子供も大人も大笑いできる貴重な機会をお見逃しなく!
https://www.tcd1.com/2019
開催日 2019年12月28日~29日(全3ステージ)
会場 キーノートシアター
住所 東京都荒川区西日暮里1-1-1

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WRITER PROFILE
大塚ヒロタ
大塚ヒロタ

俳優、テアトロ コメディア・デラルテ主宰。NY で演劇を学びコメディア・デラルテと出会いイタリアに渡る。帰国後、映画「64 -ロクヨン-」の宇津木役、「図書館戦争」シリーズの野村役で注目を集める。 映画「キングダム」「唐人街探索」「楽園」、ドラマ「フルーツ宅配便」「ボイス110緊急指令室」、CM「ほっともっと」「中部電力」「よなよなエール」 ■最新の出演作は Twitter@hirotaotsukaでも随時更新中

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