アマン京都の鳥居健太郎シェフ
INTERVIEW
CULTURE 05 Mar 2020

イタリアンベストシェフ、「アマン京都」鳥居健太郎 総料理長インタビュー

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1988年、タイのプーケット島に第1号リゾートをオープンすると、瞬く間に世界中のセレブリティたちを魅了したアマン。その後も続々と個性的なリゾートを誕生させていますが、どれも決して便利な場所にあるわけでもなく、料金も決して安価ではないのに、一度泊まるとその素晴らしさに心を奪われ、チェックアウトの際に次の予約を入れてしまうという「アマンマジック」。その秘密はどこにあるのでしょうか?

アマン京都入り口の様子

2019年11月1日、アマン京都が誕生しました。構想から約20年をかけたその場所は、京都の北、左大文字から続く鷹峯三山の麓にあります。一大観光地である京都にはあまたのホテルがあります。それらは京都駅や四条という中心地がほとんど。しかし、アマン京都は観光客がほとんどいない、住宅街を抜けた場所にあります。京都駅でタクシーに乗車し、運転手に住所を伝えると、「そんなところに
何をしに?」という交わし合いがありました。しかし、その場に到着すると運転手も驚きを隠せず。
丹波石の壮麗なゲート、美しく手入れされた森、風景に溶け込むユニフォーム姿のスタッフがお出迎え……。すでにそこは別世界の様を成しているのでした。

アマン京都敷地内にある森の庭

アマン京都が位置する京都鷹峯地区は、かつて江戸初期に琳派の創始者、本阿弥光悦が居を構え、芸術村として栄えた場所として知られています。アマン京都は、京都洛北に残された密やかな森の庭にあり、その庭は、かつての所有者が織物美術館を創ることを夢見て、年月をかけて庭をはぐくんできたとされます。

今回の主役は、アマン京都にあるザ・リビング パビリオン by アマンの総料理長、鳥居健太郎さん。京都のホテルであるから生粋の和食かと思いきや、さにあらず。イタリアで経験を積み、シンガポールやロンドンなど、海外で約16年間活躍してきた鳥居シェフに話を伺いました。

フィレンツェに渡って三ヶ月後には厨房に立っていました

SHOP ITALIA 初めて作った料理は何ですか?
鳥居 15歳くらいのときに、家族にカレーを作りました。
SHOP ITALIA それまで料理に興味があったのですか?
鳥居 そこまではなかったですね。当時、祖母が亡くなって祖父の元気がしばらくなくて、何かしてあげたい。何ができるかな。と考えていて、ふと料理を作ってみようと思いました。それでカレーを作ったら、祖父がとても喜んでくれて。そこから料理人を志すようになりました。

アマン京都内で優しく微笑む鳥居健太郎シェフ

SHOP ITALIA どこで修業をされたのですか?
鳥居 高校卒業後、料理の専門学校に進学しました。同時にアルバイトもはじめ、20歳になってすぐにイタリアへ渡りました。
SHOP ITALIA イタリアにはツテがあったのでしょうか?
鳥居 最初はなにもありません。フィレンツェで二ヶ月ほど語学学校に通い、その間に様々な方と知り合い、三ヶ月後にはレストランで働いていました。
SHOP ITALIA フィレンツェで?
鳥居 パヴィアです。
SHOP ITALIA 北に行かれたのですね。最初は下積みで、ホールや皿洗いから?
鳥居 最初はそうですね。しかし、徐々に調理もやらせてもらいました。日本でも語学を勉強してからイタリアに渡ったので、コミュニケーションが取れたのも大きかったと思います。

SHOP ITALIA イタリアに渡って三ヶ月後にはすでに厨房に立っていたんですね! 当然、パヴィアの店はイタリア料理?
鳥居 そうですね。北なのでパスタよりもリゾットがメインの店でした。オリーブオイルよりもバターを使い、そしてチーズもたくさん。ミシュランで一つ星の店でした。
SHOP ITALIA いきなり、すごいですね。どれくらい働いていたんですか?
鳥居 一年弱です。
SHOP ITALIA そこでは何を学びましたか?
鳥居 父親と同じくらいの年齢のシェフが、本当の息子のように接してくれました。住むところもレストランの上の空き部屋を与えてくれて。単に料理をするだけではなく、家族を大事にし、家族と共に楽しみ、家族が中心にあるというイタリアらしさを体感しました。イタリア料理の文化を学んだように思います。

レストラン内でインタビューに応える鳥居健太郎シェフ

パヴィアからサルディーニャ島へ

SHOP ITALIA そもそもどうしてイタリアを修業の場に選んだのですか?
鳥居 専門学校へ入学する前に、アルバイトで貯めたお金で二週間ほどイタリアを一人旅し、ミラノからレッチェまで南北を縦断しました。その時、イタリアに住もうと心に誓ったのです。
SHOP ITALIA どの都市が気に入りましたか?
鳥居 フィレンツェです。
SHOP ITALIA パヴィアの後はどうしたのでしょう?
鳥居 サルディーニャ島へ渡りました。サルディーニャ島の料理に興味があり、偶然にも友人の紹介で働くことになりました。サルディーニャ島は、アラブやスペインの影響も受けていますし、イタリアであってイタリアではない、本当に独特の文化があります。
SHOP ITALIA どのような料理を作ったのですか?
鳥居 沿岸部は当然魚介類が多いのですが、島の内陸部に行くと羊を食べます。スパイスも独特ですね。サフランやウイキョウまで。

その後、鳥居シェフはサイパンのリゾートホテルや、シンガボールのイタリア料理店へ総料理長として迎えられ、現地の食材を生かした独創的なイタリア料理を生み出していきました。そこで世界各国のお客さまの味覚の違いや好みを習得したといいます。シンガポールではイタリアンシェフ協会によるベストシェフ賞を受賞し、そこからスターシェフへ一直線へ、と思いきや、世界各地へ旅をし始めたといいます。

アマン京都内を歩く鳥居健太郎シェフ

SHOP ITALIA どこに行ったのですか?
鳥居 イタリア、フランス、スペイン、ベルギーなどを回って、アメリカ本土、ハワイにも行きました。あとはオーストラリアも。29歳の時ですね。
SHOP ITALIA 各地のレストランで働いたのですか?
鳥居 研修みたいなものです。下働きしながら、様々なシェフの料理を見せてもらいました。それぞれミシュランの星付きレストランでした。
SHOP ITALIA そんな武者修行を終えたあとは?
鳥居 またシンガポールに戻り、高級イタリア料理店で料理長を2年半務めてから、ロンドンに渡りました。
SHOP ITALIA そこではどのような料理を作られていたのですか?
鳥居 素材に合わせるか、自分のイメージから作っていくか、ですね。
SHOP ITALIA 直球でイタリア各地の郷土料理も作られるのですか?
鳥居 はい。
SHOP ITALIA その一方で、フュージョンもやられる?
鳥居 アマン京都のシグネチャーディッシュとして、「フィッシュ&チップス」というメニューを提供しています。イギリスの定番料理ですが、単に魚とポテトをフライしたものではなく、ポテトのピュレの上に、サクサクの糸状の生地で巻いた白身魚をのせたものをお出しするなど、素材や触感を一度ばらして、また再構築をはかっています。

アマン京都のシグネチャーディッシュとして、「フィッシュ&チップス」

京都ならではの食材を生かしたイタリアン

SHOP ITALIA ロンドンでの経験ののちに、ご帰国されたのですね? アマン京都ではどのような料理を?
鳥居 「ザ・リビング パビリオン by アマン」のコンセプトは「Land to Table」。京都ならではの食材、そのなかでも旬で上質なものを厳選し、その素材の味をそのままお召し上がりいただきたく、調理法はいたってシンプルです。世界各国の人々の味の好み、その土地ならではの味を考えてお作りしています。アマン京都の森の庭で、大地の恵みをいただき、食を通して自然と一体となる体験をしていただきたいと考えます。
SHOP ITALIA 洋食をベースに、地元の食材を用い、また日本の季節感を取り入れているのですね? 冬から春にかけてはどのような食材が美味しいのでしょうか?
鳥居 京都は本当に野菜が美味しいです。大根や人参をローストしたり、スチームしたりするだけでも、甘味や旨味が感じられます。シンプルな調理だからこそ、食材のよさをストレートに伝えることができます。魚介類もいいのが揃うので、塩とオリーブオイルだけで十分なくらいです。素材の美味しさをストレートに楽しめますね。

アマン京都レストラン「ザ・リビング パビリオン by アマン」の内観

SHOP ITALIA 最後に、イタリアの魅力を教えてください。
鳥居 個性ですかね。人も都市も、土地の文化や食も。それぞれが個性をもっていて、それがうまい具合に組み合わさって、ひとつの国になっているように感じます。そこから個性をもつことはすごくいいことだな、と学びました。いつもそうでありたいと思っています。
SHOP ITALIA ありがとうございました。

アマン京都スパの写真

アマン京都部屋の写真

アマン京都はオープンしたてとは思えぬほど、歴史ある趣を随所に感じさせます。スタッフの心遣い、心地よい設備、そして鳥居シェフの料理がそこに加わり、ありそうでなかなかない体験がそこには広がっています。

AMAN KYOTO

京都府京都市北区大北山鷲峯町1番
https://www.aman.com/ja-jp/resorts/aman-kyoto

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WRITER PROFILE
荻山尚
荻山尚

編集者・著者。ENGINEやCAR MAGAZINEなどの自動車雑誌編集者を経て、LEON副編集長、SENSE編集長を務めるなどファッションへの造詣も深い1972年生まれ。ピッティ・ウォモやミラノのコレクション、国際試乗会などイタリア取材の経験も豊富。ファッション、クルマ、時計など様々なモノを気持ちのいいライフスタイルにいかに落とし込むかを思案する毎日。

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