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AUTOMOTIVE 04 Jul 2019

ムゼオ・フェラーリ訪問記 特別展「HYPERCARS」と「Scuderia Ferrari 90Years」に魅了される

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自動車に詳しくなくとも、跳ね馬のエンブレムを付けた真っ赤なスポーツカーの名前を知っている人は多いでしょう。世界で最も有名な自動車メーカーともいわれるイタリアの名門、フェラーリ。その情熱的なファン=ティフォージにとって、お膝元である北イタリアの町マラネッロはまさに聖地です。

跳ね馬に魅了されっぱなしのミュージアム

マラネッロで訪れたい場所のひとつが「ムゼオ・フェラーリ」。名前のとおりフェラーリのミュージアムです。もともとは「ガッレリーア・フェラーリ」の名前で1990年にオープンし、2011年から現在の名前になりました。フェラーリの本社正門から徒歩5分ほどの場所にあり、いつ行っても賑わっています。

32台のみ作られた250LM。後ろの写真はドライバー時代の若きエンツォ・フェラーリ

32台のみ作られた250LM。後ろの写真はドライバー時代の若きエンツォ・フェラーリ。
展示室に入ると、まず初めに創業者であるエンツォ・フェラーリの生涯が語られます。幼少期の夢について、第一次大戦後に自動車の世界に足を踏み入れた話、アルファロメオ時代とスクデリーア・フェラーリの創立など、一人の男がいかにして伝説となったのか、その歩みをたどる内容です。ここはいまのところ常設展示で、いつ行っても何度でも見られますが、展示車両は時々入れ替わるようです。

再現されたエンツォのデスクにはトロフィやメガネなどが置かれ、往年を忍ばせます

再現されたエンツォのデスクにはトロフィやメガネなどが置かれ、往年を忍ばせます。
またここにはエンツォの執務室とデスクも再現されていて、レースで勝ち取ったトロフィやカップ、跳ね馬の起源となったイタリアの撃墜王フランチェスコ・バラッカの飛行機モデルなどが一緒に飾られています。この机をはさんで誰と向き合ったのか、黒電話からどこに指令を出したのか、想像するだけでモータースポーツの歴史的シーンが浮かんでくるようです。

フェラーリが生み出した“ハイパーカー”の系譜

私が訪れた時のムゼオ・フェラーリではふたつの特別展が開催されていました。ひとつは、フェラーリが世に創り出した「ハイパーカー」という超高性能な限定生産スポーツカーのカテゴリーをフォーカスした『HYPERCARS』展。そしてもうひとつが、1929年の創立から90周年を迎えたフェラーリのレーシングチームを取り上げる『Scuderia Ferrari 90Years』展です。

ハイパーカーの始祖となったGTO(左)とフェラーリ40周年記念モデルのF40(右)

ハイパーカーの始祖となったGTO(左)とフェラーリ40周年記念モデルのF40(右)。
ハイパーカーはスーパーカーやスーパースポーツと呼ばれる高性能スポーツカーを超える存在として生まれました。そのきっかけを作ったのがまさにフェラーリで、1984年に発表されたGTO(いわゆる288GTO)がその起源といえます。GTOは当時のフラッグシップモデルだったスーパーカーのBBiやテスタロッサを凌ぐ性能を与えられ、シリーズラインナップを超越した限定生産モデルとして、フェラーリにハイパーカーという新カテゴリーをもたらします。その後、GTOをさらに高性能化したF40がフェラーリ創立40周年を記念して造られたことで、この血統がフェラーリの新たな伝統なっていくのでした。

日本人デザイナーが手掛けたEnzo(手前)とハイブリッドに進化したLaFerrari

日本人デザイナーが手掛けたEnzo(手前)とハイブリッドに進化したLaFerrari(中央)。
ハイパーカーは、超高性能で生産台数が少なく高価なだけのフェラーリではありません。その時代毎に理想とされた最高のフェラーリを目指して、新しい素材や技術を使って作られます。ですからモデル毎にその時代の象徴となっているのが面白いところです。例えば2002年にデビューしたEnzoには、現在の812 Superfastまで使われ続けているF140型のV12エンジンが初めて使われましたし、2013年に発表されたLaFerrariにはフェラーリ市販車として初めてハイブリッド機構が搭載されました。今回の『HYPERCARS』展では、これらフェラーリのハイパーカーをGTOからLaFerrariまで、系譜だてて一度に見られるのが魅力です。

ワン・オフで製作された、世界に1台だけのフェラーリP80/Cのデザインモックアップ

ワン・オフで製作された、世界に1台だけのフェラーリP80/Cのデザインモックアップ。
さらに、この特別展の奥にはハイパーカーとも異なる特別なフェラーリも展示されていました。完全特別注文で製作されるSPシリーズの最新作、P80/Cのデザイン・モックアップです。レース用車両の488GT3をベースに、このモデルのためだけにデザインされたボディをまとったワン・オフのフェラーリとそのデザインスケッチも見逃せません。

フェラーリより古いフェラーリ?

もうひとつの特別展も、フェラーリを知るには欠かせない内容です。フェラーリのレーシングチーム、スクデリーア・フェラーリの90周年を記念して開催されています。

アルファロメオの博物館から企画展のために貸し出されている8C2300は戦前の名車

アルファロメオの博物館から企画展のために貸し出されている8C2300は戦前の名車です。
自動車メーカーとしてのフェラーリの歴史は1947年に始まりましたから、今年で73年目ということになります。「それなのに90周年?」というのが面白いところで、レーシングチームとしてのスクデリーア・フェラーリの歴史は1929年まで遡ります。どういうことかというと、アルファロメオのレーシングドライバーだったエンツォ・フェラーリが同社レーシングチームの監督となり、1929年に地元モデナで起こしたレーシングチームの名前がスクデリーア・フェラーリだったから。以来、アルファロメオを中心に様々な車両でレースに参戦してきました。そして第二次世界大戦を挟んで、1947年になって初めて自身の名を冠した自動車となるフェラーリ125Sを作り、自動車メーカーとなったのでした。

1975年にF1チャンピオンになった312T(右)と1979年チャンピオンマシンの312T4(左)

1975年にF1チャンピオンになった312T(右)と1979年チャンピオンマシンの312T4(左)。
今回の特別展ではそのあたりの歴史を振り返り、戦前のアルファロメオやフィアットも展示されました。また、『Sala delle Vittorie(勝利の間)』と名付けられた部屋には、1950年に始まった近代F1世界選手権を制した歴代のフェラーリGPマシンとともに、世界各地のサーキットで獲得したトロフィや歴代チャンピオンのヘルメットなどが展示されていました。フェラーリは1950年のF1シーズンから現在まで継続して参戦している唯一のレーシングチームでもあります。勝利の間の展示は、その歴史の重みを感じさせるものでした。

60年代らしい流線型のスポーツプロトタイプ、275P(手前)と275P2(奥)

60年代らしい流線型のスポーツプロトタイプ、275P(手前)と275P2(奥)。
F1の他にもミッレ・ミリアやル・マン、デイトナといったスポーツカーレースを戦ったフェラーリも展示されていました。F1だけではないスクデリーア・フェラーリのレース活動の歴史は、現在も受け継がれています。今年のル・マン24時間耐久レースでも、GTE Proクラスでフェラーリ488GTEが見事に優勝していますから。ちなみにこの優勝は、フェラーリがル・マンで初優勝をした1949年から数えて70周年のメモリアルレースで達成された快挙だったということも、覚えておきたい歴史の一部です。

ハイパーカーとレーシングチーム。フェラーリの二大アイデンティティを取り上げた今回の特別展は、フェラーリ好き、レース好きは無視できない充実の内容といえます。エミリア・ロマーニャ秋のボローニャ・モデナ・パルマあたりをこれから訪問される方は、予定に組み込んでみてはいかがでしょう?

ムゼオ・フェラーリ・マラネッロはいつも賑わっています

Museo Ferrari Maranello(ムゼオ・フェラーリ・マラネッロ)
Via Dino Ferrari, 43, 41053 Maranello (MO)
Tel: 0536 949713
https://musei.ferrari.com/en/maranello
営業時間:9.30-19.00(April-October) 9.30–18.00(November-March)
閉館日: December 25 and January 1
料金: 17,00€(Adult), 15,00€(Students and over65)

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WRITER PROFILE
小野 光陽
小野 光陽

自動車歴史家、フォトグラファー、出版者。モデナ自動車工学専門学校卒。国内レーシングチーム設計室、自動車検査登録事務所、出版社を経て独立。クラシックカーとイタリアを中心に幅広く活動中。環境省「COOL CHOICE推進チーム エコカー作業グループ」メンバー。イタリア本国ミッレ・ミリアに3度参戦。フィアット500の写真集『La 500 : piccola grandiosa』を写真家・加納 満氏と出版。

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