ART & DESIGN 03 Jul 2019

400年を経て蘇った、ラッツィオにある聖なる森の怪物公園「Parco dei Mostri(パルコ・デイ・モストリ)」

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サルバドール・ダリも愛した公園

世界中から多くの観光客がラッツィオ州の小さな町「ボマルツォ」を訪れます。ローマから車で北に1時間ほどの場所にあり、公共交通機関で行くことが難しいような田舎町になぜ多くの観光客が訪れるのでしょうか。

その答えは、「Sacro Bosco(聖なる森)」、通称「Parco dei Mostri(怪物公園)」にあります。ボマルツォの小高い丘にある怪物公園は、その希少価値や芸術性が世界的に高く評価されているのです。

スペインの画家サルバドール・ダリは、1948年に怪物公園の動画を制作し、さらに50年代にはこの場所で多くの作品を手がけたことでも有名。さらに、イタリア人映画監督ミケランジェロ・アントニオも1950年に「La villa dei mostri(怪物たちの別荘)」というドキュメンタリーを制作したことでも知られています。

有名建築家が手がけた、芸術性の高い公園

怪物公園との愛称で呼ばれている「Sacro Bosco(聖なる森)」は、ボマルツォのエリアを支配していた貴族オルシーニ家のヴイッチーノ・オルシーニ(本名:ピエール・フランチェスコ・オルシーニ)が16世紀に建築した庭園です。貴族の家に生まれ、ボルマツォの傭兵隊長として活躍する一方、芸術をこよなく愛するパトロンとしても有名でした。

そんなヴィッチーノがこの庭園の主な設計を依頼したのは、当時ランドスケープアーキテクトとして、ミケランジェロの死後、サント・ピエトロ寺院の設計を引き継いだことでも有名なピッロ・リゴーリオ。
ピッロ・リゴーリオがヴィッチーノと共に1552年ごろから庭園の設計を計画し、1555年に最初の建造物となる”La Casa pendent(傾いた家)”を完成させました。

最愛の妻を亡くした喪失感を癒す場所

ヴィッチーノの最愛の妻ジュリア・フランセは、庭園建設中の1560年に死去してしまいます。その後、ジュリアに捧げるtempio(神殿)を園内に建設しました。失意に暮れたヴィッチーノは、1499年にヴェネチアで出版された、ルネサンスの代表的な挿絵入りの本「Hypnerotomachia Poliphil(ポリフィルス狂恋夢)」にインスパイアされ、この庭園を有名にした怪物や動物などの像を備えることにしたとも言われています。このポリフィルス狂恋夢は、主人公ポリフィルスが、夢の中で摩訶不思議な動物や妖精などに出会いながら、恋人ポーリアを探し求める物語です。

園内の様々な場所には、ヴィッチーノのメッセージが施されているのも、この庭園の特徴のひとつです。中には、妻ジュリアを思うこんな文字が刻まれた場所もあります。

Scrivo sol per sfogar l’interna doglia
心の痛みを解き放つためだけにここに書き残します。

聖なる森を守る怪物たち

園内の神秘的な”怪物”と呼ばれる像は、およそ3ヘクタールの敷地に約30体ほど存在します。ギリシャ神話に登場する犬の怪物ケルベロスや女性の怪物エキドナ、6mの巨大な巨人の戦い「la lotta fra giganti」や象やライオンなどの動物など、ひとつひとつの像が特徴的で興味深いものばかりです。

中でも最も印象的なのは、ローマ神話の中の冥府の神オルクス(Orco)。巨大な口を開けた奇怪なこのオルクスは、怪物公園の象徴ともなっています。そんなオルクスの口部分には”Ogni pensiero vola (どんな悩みも吹き飛ぶ)”との文字も添えられています。

400年の歳月の後に息を吹き返した「聖なる森」

ヴィッチーノの死後、怪物公園は手付かずのまま放置されていました。しかし、約400年後の1954年にイタリア人のベッティー二夫妻によって買い取られた後、改修工事が進められ、「聖なる森」は息を吹き返すこととなります。

ヴィッチーノが目にした「聖なる森」に比べ、一般に解放された園内の歩道は整備され、植生も手入れが行き届き、当時とは若干異なるかもしれません。しかし、芸術を愛し、細部にまでこだわった庭園への思いは十分に感じることができます。

Voi che per mondo gite errando vaghi di vedere maraviglie alte et stipende
Venite qua,dove son faccie horrende,elefanti,leoni,orsi,orchi et draghi.
驚異的なもの見たさに旅をしているあなたたち
恐ろしい顔、象、ライオン、熊、オルクス、そしてドラゴンがいるここに来て

一年中、世界各国から観光客訪れる、穴場の観光スポット「怪物公園」。16世紀にヴィッチーノが心の癒しを求めて造園した、聖なる森の「驚異的なもの」をその目で見てみてはいかがでしょうか。

[ Sacro Bosco / Parco dei Mostri ]

公式サイト:https://www.sacrobosco.it
住所:Località Giardino, 01020 Bomarzo VT
営業時間:8:30~19:00 (4月~8月) /8:30~日没(9月~3月)

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WRITER PROFILE
Manami Palmieri
Manami Palmieri

イタリアのミラノ在住、フォトグラファー兼ライター。アメリカの大学にて芸術学部を卒業後、日本の一部上場企業に就職しアートディレクターとして活躍。国内外で写真展を開催するなど、アーティストとしての幅を広げ、2016年に渡伊。結婚を機にイタリアに移住。現在は、写真と文字でファッションやアートを中心としたグローバルな最新情報を発信中。

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