COLUMN
ART & DESIGN 06 Mar 2019

「次元を超える7つの塔」イタリアのコンテポラリーアートの発信基地ハンガービコッカ美術館〜イタリアンアート探訪記

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イタリア・ミラノのほど近くにある美術館「ピレリ・ハンガービコッカ

ミラノの中心地からメトロで約20分の場所にあるビコッカ地区は、大学や劇場、ショッピングモールなどが集まる文化的発展が著しいエリアです。
以前のビコッカ地区は、1900年代から鉄道車両や農業機具、ボイラーなどを製造するブレダ社を中心に、イタリア産業の中心地として繁栄していましたが、時代の流れとともに地域の産業が衰退し、1986年に地域創生プロジェクト“ビコッカ・プロジェクト”が発足されました。

そのビコッカ・プロジェクトの代表的なものが、イタリアの代表的なタイヤ製造会社「ピレリ」をバックボーンに持つピレリ財団による、コンテンポラリーアートの発展を推進する美術館「ピレリ・ハンガービコッカ」です。

ピレリ・ハンガービコッカ

ハンガービコッカを象徴する7つの塔「I Sette Palazzi Celesti」

工場の跡地に2004年に誕生したピレリ・ハンガービコッカは、ヨーロッパ最大級の単独展示スペースを誇り、15,000㎡の広大な敷地を保有していることでも知られています。

館内には、展示スペースの他にも、オープンテラスを併設するレストランやミュージアムショップがあり、定期的にコンサートや様々なアートイベントが開催され、世界的なアートを堪能しに日々多くの人々が集っています。

ピレリ・ハンガービコッカ

今回ご紹介する展示は、
2004年のハンガービコッカの開館当初にも展示された、ドイツを代表するアーティスト“アンゼルム・キーファー”による「I Sette Palazzi Celesti (7つの天空の宮殿)」。
ハンガービコッカの象徴するアート作品です。

高さ30m、4,500㎡のスペースに常設展示されている7つの塔「I Sette Palazzi Celesti」に、2015年には、5つの絵が追加され、新たなインスタレーション「I Sette Palazzi Celesti 2004-2015」として展示されています。

ピレリ・ハンガービコッカ

神秘のヘブライ文化に魅せられたアンゼルム・キーファーは、4、5世紀に執筆されたとされるヘブライ語文献「Sefer Hechalot (宮殿/聖域の書)」の中の宮殿を「I Sette Palazzi Celesti」で表現したものが、この7つの塔です。
“次元を超えた新しい空間”をテーマに据え、「第二次世界大戦以降の西洋文明の衰退:現実を直視することで見える未来」を表現しています。

ピレリ・ハンガービコッカ

展示スペースにそびえる14m〜18mのおよそ90トンの重量の7つの塔は、コンテナーを利用しコンクリートで形成されたもので、圧巻の迫力です。

7つの塔それぞれに異なるコンセプト持ち、展示スペース内に計算されたそれぞれの塔の配置やライティング、その空間はインスタレーションの魅力を最大限に引き出しています。
また、5つの巨大な神秘的な絵画と、塔のフォルムは静寂の中において、アンゼルム・キーファーがテーマに添えた、時間の流れを感じる不思議な体感をできる作品です。

最新の企画展はイタリアを代表するアーティスト“マリオ・メルツ”の「Igloos」

アルテ・ポーベラ(貧しい芸術)の活動家としても有名なイタリア人アーティスト、マリオ・メルツの企画展が昨年の10月から今年の2月24日まで、ハンガービコッカで開催中です。
「Igloos(イグヌー)」とは、カナダの先住民イヌイットの繁栄型住居のことで、約10,000㎡のスペースに、30台のイグヌーが展示されています。

ピレリ・ハンガービコッカ

生涯を終える2003年まで精力的にアーティストとしての活動に取り組んだマリオ・メルツは、イタリアを代表する芸術家です。
そんなマリオ・メルツは学生の頃には、アンチファシズムの活動を行い、その後、1年間の刑務所生活を送ったことでも知られています。

その服役中に美術評論家“ルシアノ・ピストイ”との出会いが彼の芸術家としてのキャリアに大きく影響を及ぼしました。
そして、服役中に多くのデッサンを始め、刑期終了後には絵画の制作にとりかかりました。1945年にアーティストとしての本格的なキャリアを開始し、その後グローバルなアーティストとして日本をはじめ世界中に多くの作品を届けました。
このIgloosは1968年から約40年に渡り手がけたもので、今回の展覧会は、メルツ財団とのコラボレーションにより開催されています。

ピレリ・ハンガービコッカ

マリオ・メルツにとってのイグヌーは「現代で生活する人類の居住空間」としてのメタファー。そして、テリトリーという概念を現代社会と自然界における光、土、木、石などの要素を、サイズの異なる30のイグヌーは素材や電飾ライトを使用した単語や数字を利用し表現されています。
巨大なスペースに点在する、キャラクターの異なるイグヌーは、物が溢れる現代社会や居住空間を問いかけ、ミニマリズムやアルテ・ポーベラを提唱したマリオ・メルツの芸術を思う存分体感できる展覧会です。

ピレリ・ハンガービコッカ

世界が注目する話題のオスジェメオスによる、巨大グラフィックアートは必見!

常設展として開催されているアンゼルム・キーファーの「I Sette Palazzi Celesti 2004-2015」、企画展で開催されているマリオ・メルツの「Ignoos」の他にも、
「OSEGEMEOS(オスジェメオス)」による「Efêmero(儚さ)」が展示されています。
オスジェメオスはブラジル生まれの双子の兄弟で、ブラジルを代表するグラフィティーアーティストとして世界的にも注目を浴びています。
「Efêmero」は施設内のCUBOと呼ばれる建物の外壁、1,000㎡に描かれた巨大グラフィックアートです。
オスジェメオスの作品ならではのビビッドな色使いとスケール感は圧巻です。

ピレリ・ハンガービコッカ

イタリアのみならず、グローバルなアーティストの展覧会が開催されるミラノ。
古い歴史を誇るイタリアでは、古代アートからコンテンポラリーなアートまで様々なジャンルの芸術鑑賞ができます。
広い展示スペースを誇るハンガービコッカでは、ここでしか観ることができない魅力的な芸術作品に無料で触れ合うことができる特別な美術館です。

ミラノの中心から少し足を伸ばして、スペシャルなアートを体感してみてはいかがでしょうか。

[ Pirelli HangarBicocca ]

●住所:Via Chiese 2, 20126 Milan
●営業時間:火曜-日曜 AM 10:00-PM 10:00 (定休日:月曜日)
●公式サイト:https://www.hangarbicocca.org/en/

WRITER PROFILE
Manami Palmieri
Manami Palmieri

イタリアのミラノ在住、フォトグラファー兼ライター。アメリカの大学にて芸術学部を卒業後、日本の一部上場企業に就職しアートディレクターとして活躍。国内外で写真展を開催するなど、アーティストとしての幅を広げ、2016年に渡伊。結婚を機にイタリアに移住。現在は、写真と文字でファッションやアートを中心としたグローバルな最新情報を発信中。

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