COLUMN
ART & DESIGN 23 May 2018

機能とモダン――イタリアを象徴するファニチャー・ブランドの1世紀「ポルトローナ・フラウ・ミュージアム」

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歴代プロダクトを一堂に

イタリアにおける高級ソファのリーディングブランドとして知られる「ポルトローナ・フラウ」。1912年の創業以来、世界中のファニチャー・ファンを魅了し続けてきました。その長い歴史の中で生まれた逸品を一堂に集めたミュージアムが、イタリア中部マルケ州のトレンティーノにあります。創業100周年の翌年にあたる2013年にオープンしたものです。

開館にあたり総合プロデューサーとして指揮を担当したのは、イタリアを代表する工業デザイナーのひとり、ミケーレ・デルッキです。ビジターは、コーポレートカラーである鮮やかなオレンジ色のファサードに迎えられます。館内に足を踏み入れて真っ先に目に留まるのが1脚のアームチェア。ポルトローナ・フラウを象徴する名作「バニティ・フェア」です。ガラスに囲まれた中庭で幻想的に浮かび上がる姿は、展示のプロローグにふさわしい空間演出です。

italiaエントランスでビジターを迎える純白のアームチェア「バニティ・フェア」。1930年代のカタログに登場した904モデルを原型としたもので、後にポルトローナ・フラウを象徴する製品となります。シンプルでありながら計算しつくされた絶妙なライン。イタリアンデザインの真髄がここにあります。

スタイリッシュさと作り手の温もりが共存する美

1400㎡におよぶ館内は2つのアプローチから構成されています。1つめは「家庭用ファニチャー」。サルデーニャ出身の創始者レンツォ・フラウが、トリノでソファ工房を始めて以来の歴史を辿ります。ジオ・ポンティ、ルイージ・マッソー二、F.A.ポルシェといった名だたるプロダクトデザイナーとのコラボレーションによって誕生した作品は、今日も時代を感じさせず、モダンかつ機能美に溢れる佇まいでビジターを惹きつけます。

italiaポルトローナ・フラウの原点となる作品群を紹介する「家庭用ファニチャー」のスペースより。スポットライトに照らされた「1919」は、その名のとおり1919年の作品。背もたれのボタン留めやアームなど、象徴的な形状が創業7年目にして確立されていたことを窺わせます。もともとは、ある公爵のためにデザインされたものといわれ、葉巻をたしなんだ公爵のために灰皿が備えられています。

2つめは「コーポレート向け製品」を紹介するスペース。こちらは世界各地の著名なコンサートホールや、EU議会をはじめとする会議場などの公共施設で採用された椅子が展示されています。

最後の「トランスポテーションのインテリア」と題されたスペースには、欧州のプレミアムカーや船舶、イタリアの高速鉄道「イタロ」、飛行機のファーストクラスに採用されたシートなどが並びます。

italia「トランスポテーションのインテリア」と題したスペースより。ポルトローナ・フラウが誇る「ペレ・フラウ」と呼ばれる高級レザーは、自動車や船舶、航空機のシートやステアリングなどにも用いられています。1980年代には専門部門を立ち上げて、輸送機器メーカーの要望に応えてきました。こちらは社内デザインチームが手がけたフィアット500特別仕様のシート。

嬉しいのは、こうしたすべてのシートに触れられることです。指先に伝わる革の質感、職人の丁寧な仕事に魅せられるのはいうまでもありません。さらに座り心地を確かめたい人には、現行市販ラインを扱う併設ショップを覗くことをおすすめします。最高級のレザー、洗練されたデザイン、卓越した職人技が三位一体となったシートに腰を沈めれば、そこに宿るイタリア人の高い美意識を感じることができるはずです。

Poltrona Frau Museum   https://poltronafraumuseum.it

WRITER PROFILE
大矢 麻里 Mari Oya
大矢 麻里 Mari Oya

イタリアコラムニスト。東京生まれ。短大卒業後、幼稚園教諭、大手総合商社勤務を経て1996年からトスカーナ州シエナ在住。現地料理学校での通訳・アシスタント経験をもとに執筆活動を開始。NHKテキスト『まいにちイタリア語』『朝日新聞デジタル』などに連載多数。NHK『マイあさラジオ』をはじめラジオでも活躍中。著書に『イタリアの小さな工房めぐり』(新潮社)、『意大利工坊』(馬云雷訳 華中科技大学出版社)、『ガイドブックでは分からない 現地発!イタリア「街グルメ」美味しい話』(世界文化社)がある。

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