ART & DESIGN 10 Apr 2019

イタリア彫刻家デュオ、ベルトッツイ&カゾーニの息を呑むようなセラミックによるハイパーリアリズムアート!

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イタリアでの伝統工芸と聞いて、どんなものを思い浮かべますか?
私はやはり陶芸家ですので、イタリアらしい明るくヴィヴィットな色彩が魅力のマヨリカ焼きでしょうか?!
イタリア独特の土味のあるテッラコッタにかけられた真っ白な釉薬の上に描かれた元気のある絵柄はマヨリカ焼きならではですよね。

今日は、80年代にそんな伝統工芸であるマヨリカ焼きの表現から出発し、今や世界で知られるようになった陶のハイパーリアリズム彫刻家のデュオ、ベルトッツイ&カゾーニ(Bertozzi&Casoni)の作品の魅力に迫ってみたいと思います。

80年代、二十歳の若さでアート制作会社を設立

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1984年、工房を購入しまもない頃のステファノさん(左)とジャンパオロさん(右)

物語の始まりは1970年代中頃のマヨリカ焼きのふるさとイタリア・ファエンツア。
国際的にその名を知られている国立陶芸美術学校でジャンパオロ・ベルトッツイさん(以降パオロ)とステーファノ・ダルモンテ・カゾー二(以降ステーファノ)は学生として学校に通っていました。
時は変化のない伝統工芸に新しい風を吹かせようと、現代的な感覚を陶芸作品に吹きこもうとしていた変化の時代。
二人は作品作りにおいての考え方で意気投合し、1980年、卒業後20歳という若さで会社を設立、伝統とアートが融合した手法で作品作りを精力的に始めました。

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80年代デザインオブジェ創作時代の作品をカタログから

もちろん会社を設立してすぐにどんどんアート作品の注文が入ってくるわけではありません。
購入した工房のローンを払っていくために地元の大型陶器メーカーのデザイナーとしてオブジェの開発など、出会った仕事は何でもやってきました。
努力の甲斐あり、少しずつ開けてきたデザイン業界でのマーケット。
ミラノを中心に陶器のテーブルなど、マヨリカ焼きの技法を使いオリジナルの作品作りに励む80年代でした。

90年代、現代アートとの出会い

90年代に入り、ある歴史的なギャラリストとの出会いが彼らの運命を変えます。
イタリアの現代アートをアメリカに持ち込み、NYでギャラリーを経営していたジャンエンツォ・スペローネさんの目に留まった彼らの作品。

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マヨリカ焼きで精密な彫刻作品を模索していた時代、世に出るきっかけとなった大型作品

“作品は面白いけれど、もっと印象に残る何か、一度見たら忘れられない作品にしないと。パッと見て、あ、これはあの作家の作品だとわかる事は大事だよ。
なにかもっとテクニックを洗練させてみれば?”

というアドバイスを受けて、他の作家達から一線を引くテクニックを探求します。

そこで行き着いたのは”まるで本物のように作る”、ハイパーリアリズムという技法。
木材やプラスチックと違って、セラミックによるハイパーリアリズムは色も質感も素材を熟知し、焼成後にどんなエフェクトが出来るのかおおよそ理解していなければ到底無理な技法です。

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彼らの得意とするデイテイール、卵の表現

彼らは陶芸家として土や顔料、釉薬を熟知し、伝統技法をきちんと踏まえていた作家だったので、長年の技術を活かしてハイパーリアリズムにどんどん近寄って行く事が出来ました。

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廃品マットレスの上にゴミにまみれて鎮座する動物たち。色々なテーマが入り組んでいる。

この技術を磨いて行く事によって、元々彼らの作品が持っていた作品のテーマ、カオス、食、工業製品、廃棄物…といったものに益々磨きがかかり、その作品の強いメッセージ性がどんどん人を惹きつけ、NYでの個展、ヴェニスビエンナーレと羽ばたいてゆきます。

伝統と革新の間で

ただ、その独特な作風ですぐに現代アートの世界で美術品としての価値が認められたかと言えば、そうは簡単には行きませんでした。

イタリアで”焼き物”というマテリアルは、一般的には高級感の無い素材として認知されていたからです。

煉瓦、瓦、雑器、日用品としての食器類…。ガラスや金属と言った他のクラフト系の素材と比べても、焼き物は特に庶民感が強く、高額な美術品として現実的に販売していくにはなかなかハードルが高かったのです。

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ファッションやモードをテーマにした作品。バックの中身はシュールなオブジェがいっぱい。

でもそんなハードルをものともせず、他の追随を許さない圧倒的な技術とオリジナリティーでコツコツと知名度を上げ、“伝統的な焼き物のふるさとから生まれた、斬新なセラミックの現代アーティスト”として現地では知らない人はいないくらいの有名人となり、ファエンツアという伝統工芸の街に新しい風を起こして地元に多大な貢献をする結果となりました。

世界的な作家になったその先

こうして国際的作家の名を得て、ジャンパオロさんとステファノさんは国内外で多くの展覧会を開いて来ました。

イタリアの素晴らしいルネッサンスの建築物と作品の融合を図った展覧会も多く、マントバのテ宮殿やアスコリ・ピチェーノの県立美術館などでのクラシック美術と現代アートの調和は素晴らしいものでした。

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マントバのテ宮殿での展覧会設置の様子。クラッシクな会場がアートと融合する貴重な機会だ。

2018年には、モデナ県にあるサッスオーロの街の宮殿の敷地内に彼らのミュージアムが設立され、1700年代の広い建造物の中でゆっくりと作品鑑賞を楽しむことが出来るようになりました。

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モデナ、サッスオーロのミュージアムの展示の様子。思わず手を触れたくなるものばかり。

一個人の作家が公共の施設内にミュージアムを作る、というのはイタリアでも大変珍しく名誉なことです。

現代的なモチーフをチョイスする中にも、ファエンツアの伝統的なマヨリカ焼きの絵柄を導入したり、モダンアートやポップアートの作家のオマージュを制作したり…その作品のテーマの幅はまさに伝統と現代を行き来する架け橋のような役割をしており、ただセラミックで作られたハイパーリアリズムであるからすごい、といった驚きのみを観客に与えるのではなく、そういった独創的な視点が作家としての面白みを生んだと言えるでしょう。

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出版されたカタログは数知れず。どれも見応え満載だ。

マヨリカ焼きの伝統から派生した現代アート。伝統技術がこのような形で受け継がれていくのも美の国イタリアならでは、なのではないでしょうか。

最後に秘密をお話しますと、私は何を隠そう彼らの専属アシスタントとして15年以上お仕事をさせて頂いてきました。

沢山の面白いエピソードや難関があり、アートが生まれる現場の面白さや大変さを肌で実感してきましたが、どれも今の私を形作っている大切な経験です。
そのお話はまた別の機会に、体験談としてさせていただこうと思います。

どうぞお楽しみに!

是非、皆さんもモデナ近郊に訪問の際は、ベルトッツイ&カゾーニのミュージアムに足を運んで見て下さいね。

イタリアの現代アートの中に、こっそりと伝統を感じる鍵が隠れてかもしれませんよ。

ベルトッツイ&カゾーニHP:
www.bertozziecasoni.it

ベルトッツイ&カゾーニミュージアム(Museo Bertozzi &Casoni)

住所: Via Racchetta 4、41049 Sassuolo (MO) ITALY

電話: (+39) 0542- 640136

開館時間:  金、土、日の15:00~19:30 (イタリアの祝日に重なる場合は要確認)

HP: www.museobertozziecasoni.com

WRITER PROFILE
林由紀子
林由紀子

マルケ州、ウルビーノ近郊のカーイ(Cagli)在住。1999年渡伊、ファエンツァの国立美術陶芸学校の陶彫刻科を卒業後、現代美術アーティストBertozzi&Casoniのもとでアシスタントとして12年に渡ってコラボする。2003年にマルケ在住のイタリア人と結婚したのをきっかけに、マルケ州の郷土料理や工芸、美術文化に強く惹かれ、自らも陶芸家として活動する中、ウルビーノを中心とするマルケ北部や県境近郊の食文化、美術工芸文化を発信する(ラファエロの丘から)を立ち上げ、現地アテンドや料理教室、工芸体験などのオーガナイスや、ウルビーノを紹介する記事などを執筆。http://www.collinediraffaello.it/

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