B&B
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ART & DESIGN 25 Sep 2018

【対談】ラグジュアリーが未来をひらく鍵に。日本の社会とライフスタイルを変えていく/ゲスト:野澤隆之(安田造船所グループCEO)

濱口 重乃 Sigenori Hamaguchi
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エディターの濱口重乃さんをホスト役に、イタリアのデザイン(ファッション、インテリア、プロダクト)やカルチャーに精通するゲストをお招きしてトークを繰り広げる対談スタイルの連載「シゲノリ・サローネ」。

今回のゲストは、イタリアの家具「B&B Italia/MAXALTO」日本総代理店progetto81の代表取締役CEOにして、イタリアのクルーザー「AZIMUT(アジムット)」日本総代理店である安田造船所の代表取締役CEOをつとめる野澤隆之さん。世界最高峰の家具と船のブランドを日本で展開する野澤さんに、イタリア製品の魅力、さらにブランドビジネスの極意についてうかがいました(前口上:Webマガジン「SHOP ITALIA」編集長 平林享子)。

もっと家に人を呼べるライフスタイルを

濱口:ここ(B&B Italiaショールーム1階)は、夏の間、夕方からアペリティーボ* をやってるんですね。贅沢ですね。
*アペリティーボ・・・イタリアの習慣で、ディナー前の夕刻に軽くアルコールをとりながら会話を楽しみ、食欲を増進させたり、仕事からプライベートへON/OFFの切り替えをすること。

野澤:夜、このショールームを閉めておくのはもったいないので、夕方からアペリティーボ、さらに夜になるとワインバーに変貌するんです。これほど内装にお金をかけたバーは、ちょっと他にないでしょう(笑)。

B&B Italia

濱口:世界最高峰のインテリアと音響システムがあって、こんな贅沢な空間でお酒を飲めるなんて、お客様も喜びますね。

野澤:ふつうの家具売り場のように、商品を並べるだけではダメなんです。ブランドの哲学をわれわれが実践して見せていくことで説得力が出ると思っています。この場所はきっかけ、ポータルに過ぎません。


「シゲノリ・サローネ」ホスト役の濱口重乃さん(左)と、今回のゲストの野澤隆之さん。

濱口:野澤さんの会社がB&B Italiaの日本総代理店となってこのショールームを開いた2015~2016年頃、ちょうど僕は『ELLE DÉCOR(エル・デコ)』の編集長をしていたので、野澤さんのお仕事にはずっと注目していました。B&Bはすばらしいブランドですが、当時、日本の市場では思いのほか苦戦していました。そのブランドを野澤さんがどう展開されていくんだろうと。

野澤:家具のことは素人でしたが、B&Bは大好きなブランドでしたから、僕のところに話が来たとき、「やります」って即答でした。それまでに船や車のビジネスをしていて、ブランドにしっかり向き合っていることが認知されたんでしょうね。

B&B Italia

濱口:異業種からの参入で、軋轢は感じませんでしたか?

野澤:外からパラシュートでど真ん中に降りてきたようなものだったので、とくに軋轢はなかったですね(笑)。むしろインテリア業界に対して、ちがう業界から来た僕たちが、どんなふうに貢献できるかという発想で動いてますから。すでにある市場で顧客の取り合いをするわけではなく、市場をどんどん拡大して、一緒に新しいお客様を呼び込んでいこうとしています。

濱口:このショールームが外苑前にできてから、インテリア業界内のコミュニケーションも活性化されたように感じます。野澤さんがB&Bを手がけるようになって最初に変えようとしたのは、どういうことだったんですか?

野澤:日本人は、家に人を呼ぶってことをしないですよね。もっと家に人を招く文化をつくっていかないと、こうしたラグジュアリーな家具は売れるわけがないと思います。

このショールームのコンセプトは「家に人を呼ぶライフスタイルを実践して見せる」、つまり、ここは僕の家なんです。 だからキッチンには冷蔵庫もあって食洗機もあってワインセラーもある。まずは、人を家に招く文化、人を呼べるライフスタイルを日本に定着させることが最初の目標です。

そして、B&Bの家具はふつうのマンションだと、まずエレベーターに入らない。でも、この家具のサイズが世界の(ラグジュアリー家具の)モジュールなわけですから、次の提案としては、B&Bの家具が入るようなサイズの部屋をマンションごと建てようという不動産ビジネスになっていきます。ただ家具を売るだけのビジネスではないんですね。

お客様がここに入ってくると、一つ一つの家具を見るというより、この空間でB&Bの世界観を体験している。そして、この世界観に共感して、私たちのブランドのファンになっていただくことが大事だと思っています。うちで働いているスタッフは、人をもてなすということにおいてもプロフェッショナルで、一流ホテルのスタッフと同じような気配り、ホスピタリティをもっていると思います。


濱口:それはすごくわかります。このB&Bのショールームができて以降、他のブランドもプレゼンテーションの仕方が変わってきたと思います。だって、こっちのほうが楽しいから(笑)。

野澤:「真似したい」って思ってもらえたとしたら、それは私たちの狙い通りですね。ラグジュアリー家具の市場は、今後、今の10倍ぐらいに成長すると思っています。豊かなライフスタイルへの関心は、一部の富裕層だけでなく、マスにもスイッチが入ってきていますので。

日本のラグジュアリー市場はもっと拡大する

濱口:B&Bを日本でローカライズする上で、野澤さんが大切にしていることはどんなことでしょうか?

野澤:イタリア本国の哲学や方針をしっかり翻訳して、自分たちのセンスで市場に伝えていくことはもちろんです。さらに僕らは、来年や再来年の売上のことより、100年後、200年後のことを考えて、このブランドを育てていくにはどうしたらいいかと考えています。イタリア本国よりも、もっと高度なレベルでブランドを伝えることができると自負しているので、僕らの売り方や伝え方を見て、参考にしてほしい、と思っているくらいです。

まったく鼻持ちならないことを言っていますけれども(笑)、そのぐらいの気概じゃないと、ブランドには向き合えないですから。

濱口:ブランドへの対峙の仕方が、他の外資系ブランドの方々とはちがうような気がするのですが。

野澤:僕はそれをまさにブランドから学んでいるんです。たとえば、アジムットの創業者のパオロ・ヴィッテリとつきあっていると、彼から学ぶことがいろいろあるんです。なぜ、この一見、普通のオジサンが、みんなから憧れられるブランドをつくったんだろうということが、彼の言動を見ているとわかってくるんですね。ブランドの根幹に、人間としての哲学があり、魅力がある。それこそがブランドの本質で、そこに触れていくことがブランドを知ることになり、また、それを発信していくことがブランドの価値を育てていくことになるんです。


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濱口:アジムットの日本での展開については、いかがですか?

野澤:アジムットの取り扱いをはじめて3年余りですが、着実に日本にも定着してきました。ただ、世界的に見たときに、まだまだ日本はマリンリゾートでは遅れているので、制度の整備などを進めています。

世界的に言えることですが、人は経済的に余裕が出てくると、イタリアの洋服が着たい、イタリアの家具に囲まれて暮らしたい、イタリアの船に乗りたい、そういう感覚になるようですね。

濱口:船もやっぱりイタリアのものが最高なんですね。

野澤:イタリアのラグジュアリーは素敵ですから。イタリアの服を一度着ると、形が美しくて、着心地がよくて、遊び心があって、自分の感性にしっくり合うので、ずっとそれを着るようになる。それと同じことが船でも起こります。自分の感性に合うものを求めていくと、自然にイタリアのものが増えていきます。

日本という国のブランド価値を高めていく

濱口:野澤さんの今後のヴィジョンにも、すごく興味があります。

野澤:次のステップとしては、町の再生、地域の活性化、リゾート開発です。ヨーロッパの人がバカンスで地中海のリゾートに行くように、三浦(神奈川県)や下田(静岡県)を富裕層が集まる魅力的な場所にしていく。 それがひいては日本という国を魅力的にしていく。それは観光業じゃなくブランドビジネスなんです。たとえば、世界的な大富豪が別荘を持っただけで、その町の未来は大きく変わる可能性を持つこととなる。そういう時代が来ています。

「ラグジュアリーのふりかけ」と僕たちは呼んでるんですが、今あるものに「ラグジュアリー」をふりかけることで解決できることが、日本にはいろいろありますよ。 ラグジュアリーをきっかけとして日本を変えられると私は思っています。

濱口:そういう発想でラグジュアリーを語る人は他にいないですよね。

野澤:私は物欲も金銭欲も何もないんです。何のためにやっているのかというと、国のため。この国をよくしたいと思って頑張っている。そんな人間のことを、誰も足を引っ張ろうとは思わないですよ。まあ、僕はときどき鼻持ちならないことを言うけれども、実際に会ってみればいい人だし(笑)、無私無欲で頑張ってるんだから、みなさん、応援してくださいますね。

それもブランドビジネスを通して学んだことです。ブランドを牽引する人は、一度会ったら、全員がファンになるくらいの魅力やカリスマをもっていますから。

濱口:野澤さんは、もの静かな方ですが、お話を聞いていると、独自の哲学や価値観がある。

野澤:内側は熱いんですよ。こっちの腹がすわっていないと、世界最高峰のブランドと対決するなんてことはできません。ある意味、ストリートファイトですから、ケンカに強い奴が勝つんです(笑)。

私は、哲学する趣味人だから強いんですね。「自分がこの国に対して何ができるか」という、結構、暑苦しいことを考えていますよ。

世の中を変えるのは、政治、宗教、教育…いろいろありますが、私の場合はその手段がラグジュアリーなんです。ラグジュアリーをきっかけにして、日本の閉塞感だったり、地域産業の停滞、雇用の問題など、いろんな問題が解決できることを知っているんです。

◆対談構成/平林享子
◆写真/アレッシオ・ミラネスキ

野澤隆之

PROFILE
野澤隆之(のざわ・たかゆき)
1963年、群馬県生まれ。大学卒業後、不動産ビジネスや企業再生プロジェクトに従事。1998年、安田造船所の代表取締役CEOに就任。2008年、アトランティックカーズの代表取締役CEOに就任。2015年、安田造船所とカルチュア・コンビニエンス・クラブとの共同出資によりprogetto81設立、代表に就任、B&B Italia の販売を手がける。2015年、三浦地所を設立し、代表に就任、マリンリゾート開発などを手がける。

INFORMATION
B&B Italia Tokyo
東京都港区北青山2-5-8 青山OM-SQUARE 1、3F
TEL:0120-595-591
営業時間:11:00~19:00 
定休日:水曜日
Webサイト: https://bebitalia.co.jp/
1966年、イタリアで創業し、高度な技術と洗練されたデザインで世界のモダンファニチャー界をリードしてきたB&B Italia。日本では、2016年、新たなショールームが外苑前にオープン。1階(650㎡)と3階(250㎡)の2フロアのゆったりした空間に、B&B ItaliaとMAXALTO(マクサルト)、2つのコレクションを展示。ラグジュアリーなライフスタイルを提案しています。

安田造船所  https://www.yasuda-shipyard.com/

WRITER PROFILE
濱口 重乃 Sigenori Hamaguchi
濱口 重乃 Sigenori Hamaguchi

慶應義塾大学経済学部卒業。1994年平凡社に入社し、グラフィック誌「月刊 太陽」の編集に携わる。2001年文藝春秋に入社。女性誌「CREA」のデスクを務めた後、2005 年ライフスタイル誌「TITLE」編集長に就任。2008年コンデナスト・ジャパンに移籍し「GQ Japan」編集長に就任。フリーランス編集者を経て、2013 年ハースト婦人画報社にエディトリアル・アドバイザーとして入社。2014年インテリア&ライフスタイル誌「ELLE DECOR」編集長に就任。2017年7月よりハーパーコリンズ・ジャパン シニア・エディトリアル・ディレクター。

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